生物発光は抗酸化機能が転用されたものだった
現在の生物発光はルシフェリンと呼ばれる物質をルシフェラーゼと呼ばれる酵素が分解するという仕組みをとっています。
過去の研究によれば、この生物発光はもともと酸化ストレスに耐えるための仕組み(抗酸化機能)であった可能性が示されています。
酸素を使う呼吸システムは莫大なエネルギーを使用可能にしてくれる反面、酸素を含む危険な分子(活性酸素)を発生させ、細胞の各所を傷つける酸化ストレスを発生させます。
また酸化ストレスはDNAを傷つけ、老化の主因ともなっています。
生物は酸素呼吸能力と引き換えに、錆びゆく体となってしまったとも言えるでしょう。
しかし生命は危険な活性酸素に結合しやすいタンパク質を作ることで、活性酸素を体から除去する仕組みを開発しました。
過去の研究ではルシフェリンの一種であるセレンテラジンには活性酸素との反応性が高く、強力な抗酸化機能を持っていたことを示しており、発光システムの起源が抗酸化機能である可能性が示されました。
またサンゴが深海に進出したことも、重要な要因です。
深海では比較的活性酸素が発生しにくく、ルシフェリンを使った抗酸化機能に遊びがうまれ、自己防衛のための発光能力へと変化する余地が出たと考えられるからです。
(※生命の進化において絶対に必要な機能はむしろ変異しにくく、あまり必要でなくなった機能ほど別の機能に転用されたり、退化していく傾向があります)
研究者たちは今後、能力ベースの分析から遺伝子ベースの分析に移行することで、発光システムの遺伝的な起源についても解明していくと述べています。