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忘れてしまった「幼い頃の記憶」は取り戻せるという研究

2018.07.11 Wednesday

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Point
・幼少期の記憶は脳から消えてしまったのではなく、思い出せないだけであることが判明
・マウスの「幼児期の記憶」に関連する脳領域に刺激を与えると、記憶を思い出せることが判明
・研究から、幼児期の体験について記憶と忘却システムの解明が期待される

あなたが思い出せる中で、一番昔の記憶とはどのようなものでしょうか?その記憶は通常、赤ん坊の頃ではなく、3~4歳のときに体験した出来事かと思います。

では、なぜ赤ん坊の頃の記憶というのは思い出せないのでしょうか。それらは完全に失ってしまい、決して思い出せないのでしょうか。

トロント大学の神経科学者チームは、幼児期の記憶が脳から完全に消失するのかを調べるために、マウスを用いて実験を実施。その結果、幼児期の記憶は脳から消去されるのではなく、記憶に関する脳細胞に刺激を与えることで思い出せることを発見しました。

実験では、踏むと電気刺激が流れる装置が取り付けられた箱を用意し、幼児のマウスをその箱に入れて電気刺激を学習させました。マウスは15日ほど経つと、電気刺激の記憶を忘れます。

研究者は、上記の方法で幼児のマウス数匹に電気刺激を学習させ、刺激が与えられたときに活発に働く神経細胞に目印を付けました。

学習から数週間してマウスが電気刺激の記憶を忘れた頃、光で遺伝子を操作するオプロジェネティクスを用いて、目印が付いた神経細胞に刺激を与えました。するとマウスは、忘れたはずの電気刺激について記憶を取り戻したような振る舞いを見せました。これは幼児期の記憶が脳から消えることはなく、ただ思い出しづらいだけだということを示しています。

しかし、マウスの中には記憶が戻らないものもいました。記憶を思い出したマウスは、実験全体で70%程度だったとのこと。すべての個体が思い出すというわけではないようです。

論文著者のパウル・フランクランド氏は、「研究結果から、生まれたばかりの記憶は脳から完全に消失するわけではないことが分かりました。その記憶に紐付けられた脳の領域を刺激することで、記憶を引っ張り出すことができるのです」と述べています。

今回の研究から、幼児期の体験について記憶と忘却のシステムの解明につながることが期待されています。

via: ScienceAlert / translated & text by ヨッシー

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