原因は細菌? おなかの中でビールができる!

もっとも古いABSの記録は、1948年のアフリカだそうです。
アフリカ人5才の男の子が夕食にサツマイモを食べたところ、お腹の中で異常発酵を起こし、発生したガスの圧力で胃が破裂、アルコールが腹膜に放出されて死亡しました。それ以降、成人と子どもで数例が報告されています。
1972年に日本から酒を飲んでいないにもかかわらず酔った状態になっている患者2名の報告が出されたことで、体内でアルコールが作られる奇病の存在が広まりました。日本では酩酊症と名付けられたそうです。
ABSは腸内細菌叢などにアルコール発酵を起こす真菌類が紛れ込み、炭水化物や糖を使ってアルコール発酵を起こすと考えられています。
発症のきっかけは糖尿病や肥満、高炭水化物の食事、歯周病、クーロン病のような自己免疫疾患、開腹手術など非常に幅広く、いつどのような時に誰が発症してもおかしくない病気です。
ABSの原因菌と考えられているのは、口や女性器に感染症を起こす真菌類のカンジダ ・アルビカンスとパンやアルコール飲料の製造に使用されるビール酵母のサッカロミセス・セレビシエです。
サッカロミセス・セレビシエが原因なら、お腹の中でビールが作られるような状態になります。
ただ、原因菌は他にも存在している可能性があるようです。
例えば、カンジダ ・アルビカンスが原因の場合、彼らは口の中や膀胱内にコロニーを作るため、ABSを発症させる患部がお腹以外ということになります。
このためABSは患部が限定されないため、原因菌の特定が難しい病気なのです。
先に説明した50才の女性は尿路感染症のために抗生物質を長期間飲んでいました。また逆流性胃炎のため、制酸剤も飲んでいて、この組み合わせが腸内環境を乱したことが原因ではないかと考えられています。