古代エジプトの書記はかなりの激務だった?
古代エジプトでは少なくとも5000年以上前から今日のような筆記が行われていました。
ペンには葦(あし)の茎を切り取って先を斜めに削ったものを使い、それをインクに浸してパピルスという紙に文字を書いていたのです。
しかし古代エジプトの識字率は非常に低く、読み書きができるのは一部の選ばれた男性だけでした。
書記官になれたのは全体の人口のわずか1%ほどで、これらの男性は社会的地位が高く、重要な行政業務を担っていました。
主な仕事内容は公文書の作成です。
例えば、法律や税金、契約書を作成したり、王であるファラオの功績や戦争の詳細を記録していました。
また神殿や宗教儀式に関する文書の作成や、葬儀の際に使用される呪文や祈りの筆記も担当していたといいます。
ただ書記官の仕事はまったく楽なものではなく、相当な激務でした。
歴史的な記録によると、彼らは日の出とともに仕事を始め、最も猛暑になる昼間は休みを取って、暑さが和らいだ午後から再び日没まで作業を続けたと考えられています。
それから当時の書記官は今日のデスクワーカーのように机を使うことがありませんでした。
彼らは書記板といって、平らな木製の板や石板をひざの上に乗せた状態で、地面に座ったまま作業をするのが一般的だったのです。
ごく一部の高官や宮廷の書記官は椅子に座って作業をすることもあったと見られますが、これは基本的に例外だったといいます。
その苦しさを想像してみてください。
これを今日のデスクワーカーに置き換えてみれば、地べたに座ってひざにノートパソコンを置いたまま何時間も作業を続けるようなものですから、心身に相当なストレスを与えたはずです。
研究主任のベロニカ・ドゥリコバ(Veronika Dulíková)氏によれば、古代エジプトの書記官は10代で仕事を始め、その後数十年間にわたって同じ仕事を続けたと述べています。
現代のデスクワークも、何時間も同じ姿勢を続けるため、健康上の様々な問題を起こすことが知られています。
エジプトの書記官もこんな無理のある姿勢で何十年間も働き続けるわけですから、体に何らかの支障が起きていても不思議ではありません。
そこで研究チームは今回、古代エジプトの書記官の遺骨を詳しく調べてみました。
すると古代エジプトにおける過酷なデスクワークの状況が見えてきました。