女子の理系への苦手意識は環境が左右する
日下田准教授は「自分は理系であると認識すること」を「理系意識を持つ」と表現しています。
同准教授の論文によると、小学校5~6年生になると女子が理系意識を持ちにくくなり、男女に差があらわれるとしています。
実際に、全国の小学生を幅広く対象とした調査では、小学校5、6年生で理系意識を持つ児童は、男子60.0%に対し、女子は37.7%とすでに差が出ていました。
この男女差は高校までずっと逆転することがなく、常に男子よりも女子のほうが理系意識を持てない状態が続きます。
論文では、なぜ「女子が理系意識を持てない」のか、従来のジェンダー研究をもとに、次の3つの観点で検証が行われました。
- 女性は算数が苦手だという思い込み
- 父親との接触頻度
- 能力が高ければよいという価値観
それぞれどのような結果となったのか紹介します。
①女性は算数が苦手だという思い込み
調査によると、女子では、「算数や理科は男子の方が向いている」と考えている人ほど理系意識を持ちにくい結果となりました。
逆に男子においては、「算数や理科は男子の方が向いている」と考えている人のほうが理系意識を持っています。
先行研究によると、これは男女ともに自身の能力を低く見られるのは避けたいと考える傾向にあることが要因とされています。
理系科目が苦手な女子は、この考えを支持することにより、「能力が低いのは自分のせいではなく、性別のせいである」と受け入れやすくなるのです。
逆に理系科目が苦手な男子は「男子なのに理系科目ができないのは能力が低い」という批判を避けるために、「男子は女子よりも理系科目が得意」という考え方を否定するようになります。
今回の調査でば、「上手な勉強の仕方が分からない」と学習に対して不安が大きい女子ほど、理系意識を持ちにくい結果も出ており、女子は「算数が苦手→女子だから頑張ってもできない」と負のスパイラルに陥りやすいことが示唆されています。
②父親との接触頻度
異性がいない学校よりも、男女半数ずつの学校のほうが、女子が理系科目に苦手意識を持ちやすくなるといわれています。
近くにいる男性の存在が女子の理系意識に影響するのだとするなら、女子にとって一番身近な存在である父親との接触頻度は理系意識と関連するのでしょうか?
この疑問を調査した結果、女子は父親との会話頻度が高いほど理系意識を持ちづらくなることが分かりました。
男子は父親との会話頻度が理系意識に影響することはなく、これは女子特有のことです。
この理由について、研究者は「父親との会話は女子にとって、ジェンダーを意識する機会になりやすく、その中で理系は男子向けという意識が高まってしまい、理系を自分からは縁遠いものに感じてしまうのではないか」と考察しています。
これは「別に女の子が無理して理系に行かなくてもいいだろう」という意見を持つ父親が、世の中に多いことを示しているのでしょう。
ただ理系に進んだ女性の中には、父親が理系だったからその影響で同じ道に進んだという人もいるかもしれません。
しかし、その場合でも理系出身の男性は、自身の経験から「あんなとこ男子ばっかだぞ」という意見を持ちやすいので、自然と理系に女子はいないんだという印象を植え付けてしまう可能性はありそうです。
③能力が高ければよいという価値観
一見関係なさそうに見えますが、「競争に負けた人が幸せになれないのは仕方ない」という業績主義的価値観も女子の理系意識に関連しています。
男子は業績主義を持っていても理系意識の有無とは関係がありません。
しかし、女子の場合業績主義を持たない人ほど理系意識を持ちづらい傾向が見られました。
女性の理系進出を増やすために必要なのは大学の女性枠?
今回紹介した論文から、女性が理系科目に対して苦手意識を持つのは小学校高学年からであり、そこには「女性は理系科目が苦手だ」というジェンダーバイアス、父親との会話の頻度、業績主義的価値観(結果を残すことがよいとする価値観)が関連することが分かりました。
そのため、理系に進学する女子を増やすためには、女子の算数への苦手意識やジェンダーバイアスを解消するような働きかけが必要と考えられます。
また、すぐに解を得るための学習ではなく、じっくりと解法を考えるような教育をすることで、業績主義的価値観を持たない子も「算数はおもしろい」と新しい魅力を感じられるようになるでしょう。
親から引き継がれる価値観も、女子の理系意識に強い影響を与えていると考えられるため、親が「女の子は文系でいいんじゃない」といった決めつけで進路に意見を出さないことが重要でしょう。
おそらくほとんどの人が「女性は理系が苦手」という今回の記事のテーマを見て、自然と「確かに、なんでだろう? 脳の作りが違うのかな?」という予想を思い浮かべたのではないでしょうか?
しかし実際調べてみると、女性が理数系を苦手とするような証拠はなく、ただの印象であることが示されています。この印象が継承されていった結果が現在の「女子は理系科目が苦手」の正体なのでしょう。
理系人口が減っていくと、結果的には国の技術力が落ちていくことに繋がります。
理系人口を増やすためには、男女問わず理系科目に興味が持てる環境を作り出すことが重要でしょう。そのためには出口である大学に目を向けるだけではなく、学問への入口に立つ小学生へのアプローチが重要となるのです。
キャッチーさやインパクトを重視してのことなんだろうけど、ナゾロジーくんのときどき無邪気で無神経なタイトルの付け方はどうもノイズになるなあ。内容は真っ当なのに。
理数系ができる女子は可愛くない、という意識が蔓延しているのだと思います。
また小学校の先生で数学的な思考が正しくできる人が多くはなく、根本的な概念を教えられていないというのも問題だと思います。
ジェンダーって言葉が出るだけで嘘っぽくなるな
性別で好みがわかれるなんて経験でわかるだろ
理系を好む男性が多いってだけ
経験でわかるだろって言われても、「そう考えられてるのはなんで?」って話をしてるんだろうに…
あと「ジェンダー」で、あの(胡散臭い)活動のこと思い浮かべてるんだろうけど、
「文化的・社会的に構築された性差の概念のこと」って意味の一単語としてしか使われてないように思うが…
宗教や習慣などによる男女の差異には少なからず心当たりあるでしょう?
まったくその通りと思います
完全に間違っている。男子の方が鉄オタのように一点の興味を持ちやすい、数学に優秀なトップクラスの生徒は男子に多く、全体を平均すると男女あまり変わらない。
外国を意識する必要はなく、それぞれが興味を持つ分野に進むのが良く、政府が誘導するのは間違っている。好きならそれで良いのではないか
日本の理系女性比率が低いのは環境のせいであることは事実でしょう。
しかし、OECD諸国の平均も1/3以下なのですよね。また、ノーベル賞受賞者も、今なお男性が圧倒的多数です。このことは、環境以外に性差の要因があることを示しています。
私が推測するに、男女の視覚の違いが要因の1つではないかと。人間の目の視細胞には、動きに敏感だが色を感じない「桿体細胞」と色を感じるが動きに鈍感な「錐体細胞」の2種類があります。そして、男性は女性よりも「桿体細胞」の割合が多いです。その結果、男性は動体視力に優れ、女性は色彩の識別に優れます。男児が乗り物や恐竜など動く物を好み、女児が花やアクセサリーなど鮮やかな物を好むのは、それが理由です。乗り物が好きな子供なら、その一部は乗り物がどうやって動くのか興味を持ち技術者になるでしょう。恐竜が好きな子供の一部は古生物学者になるでしょう。しかし、アクセサリーが好きな子供が将来デザイナーになることは容易に想像できますが、科学者になることはやや想像しづらいです。これが、理系に対する男女の性差の理由なのではないでしょうか。
皆さんには、そもそも優秀な技術者が不足している問題を踏まえてほしいです。本文にあるように、技術者なしに人々の生活の発展はありえません。だから技術者を増やすにはどうすれば良いのかを考えているのです。理系への女性誘致はあくまで手段であり、決してジェンダー問題が中心ではありません。物事の本質を見誤ることのないようにお願いしたいです。
性別や遺伝子関係なく今回のように経験と固定観念が積み重なってそうなっているのは色んな業種で起こっているんだろうなあ「医者」と聞いたら男性を思い浮かべてしまう、みたいな。
父親対応というのも、統計的ファクターとしては雑駁すぎますよね
私個人としては、ひとえに、幼少期、小学校課程での遊びと友人交流の有り様が最も影響あると思いますよね。
オママゴト、お人形遊びが多い人間と
自然観察、屋外での人的接触の多い人間とでは
その後の学究態度の深まりに差が出るのはアタリマエでしょうよ