45億年前の隕石の塵からレゴブロックを作成
月の表面は、「月のレゴリス」と呼ばれる「岩石由来の細かな砂」に覆われています。
ESAの科学者たちは、月まで建材を運ぶのではなく、月に行き、その場で月のレゴリスを使って建材を作る方法を考えました。
そしてこの方法をまず地球で検証するためには、大量の月のレゴリスが必要になります。
しかし、実験に十分利用できるほどの月のレゴリスは、地球上に存在しません。
そこで科学者たちは、月のレゴリスに一番近い物質として、「隕石の塵」を使って実験することにしました。
この隕石は2000年に北西アフリカで発見されたもので、約45億年前のものだと考えられています。
地球で発見されたその隕石の塵には、金属粒子やコンドリュール(ケイ酸塩鉱物を主成分とした粒子。多くの隕石に含まれる)などの宇宙材料が詰まっています。
ESAの科学者たちは、この塵を少量の「ポリ乳酸(微生物で分解できるプラスチック)」や「レゴリス類似材料(NASAが開発した月や惑星の塵に似た物質)」と混ぜ、レゴブロックの形状に3Dプリントしました。
出来上がったレゴブロックは、表面がやや荒く、見た目もグレー1色であり、かなり武骨なイメージです。
しかし、従来のレゴブロックのように、ブロック同士を簡単にカチッとはめたり外したりできます。
ESAの科学者であるエイダン・カウリー氏は、この未来の宇宙建材について次のようにのべました。
「私たちは、クリエイティブな建築が大好きで、宇宙の塵から作ったレゴブロックで建築技術のテストを行うというアイデアを思いつきました。
大切なのは、遊びながらデザインのテストを行えるという点です」
そしてLEGOグループのダニエル・ミーハン氏も次のよう述べています。
「今回のことで、子供たちがレゴブロックで遊ぶことには無限の可能性があると分かりました。
これをきっかけに、子供たちが自分だけの宇宙シェルターを作ることできるようになることを願っています」
ちなみに、今回のプロジェクトで作られた「隕石の塵のレゴブロック」は、アメリカ、イギリス、デンマーク、オーストラリアなどの一部のレゴストアで展示されることになりました。
展示期間は2024年6月24日から9月20日までです。
この展示は、子供たちに宇宙旅行について興味を持たせ、「自分たちの月面シェルターを作る」という夢を育ませることでしょう。
もしかしたら将来、レゴブロックで遊んだ子供たちが宇宙飛行士となり、月面で作られた巨大なレゴブロックで家を建てるなんてこともあるのかもしれませんね。