人気だった材料は大豆食品とダイコン
またおかずの材料となる食材ですが、魚介類の場合は加工食品が多く、野菜類の場合は生鮮食品が多かったようです。
これは生鮮野菜に関しては陸路での流通機構が整備されていたことにより江戸近郊から流通させることが容易かったのに対し、生鮮魚介類に関してはコストが高かったことから流通させることができなかったためです。
もちろん鮮度を保つために特別な処置をした魚介類は江戸でも販売されており、たとえば刺身を食べることさえできました。
しかしこうした食材はかなり高かったこともあり、庶民が気軽に食べられるものではありませんでした。
調理によく使われた食材としては、豆腐・油揚げ・ナス・ダイコン・イワシなどがあります。
特に大豆の加工品は豆腐や油揚げ以外にも多く登場しており、いかに大豆加工品が動物性たんぱく質を摂取する機会が限られていた当時の人々から必要とされていたのかが窺えます。
ナスやダイコンといった野菜は、季節ごとの新鮮な味わいを楽しむだけでなく、保存食としても活用されました。干しダイコンはその代表例で、長期間保存ができ、煮物や漬物などさまざまな料理に使われました。
また魚介類と野菜を組み合わせた料理も多く、江戸時代の料理は栄養のバランスが比較的取れていたことが窺えます。
さらにイワシなどの魚介類は、庶民にも手が届きやすい価格で供給されました。
イワシはそのまま焼いたり、煮物にしたり、または干物として保存食にしたりと、多様な形で食卓に上ったのです。
江戸時代の食文化は、地域ごとの特色を活かしつつ、季節の食材を取り入れ、保存食や調味料の工夫を通じて多様な料理が楽しめるものでした。
このようにして、庶民の食卓には栄養バランスが取れた料理が並び、江戸の人々の健康を支えていたのです。