パイクは「ハリネズミ戦法」に似ている?
「パイク」という用語は歴史的に見ると、15〜17世紀にかけて、歩兵用の武器として対騎兵・対歩兵に使われた槍の一種のことです。
パイクは一般的に4〜7メートルもの長さがあり、歩兵たちはパイクを持ったまま隙間なく密集あるいは横隊を組んで、相手が突っ込んでくるのを待ち構えて槍先を敵兵に突き刺しました。
いわゆる”ハリネズミ戦法”のようなもので、自ら積極的に槍を投げたり振り回すのではなく、ジッと固定した状態で相手の突進力を利用したのです。
パイクは相手が突進してくるのを待ち構えるので狙いを外す心配が少ないですし、自分から槍を投げたり、刺しに行くよりも強い力が加わります。
特にパイク戦法は大型動物に有用だったでしょう。
研究主任の一人であるジュン・ウエノ・スンセリ(Jun Ueno Sunseri)氏は「突進してくる動物が生み出すエネルギーは、人間の腕で生み出すエネルギーとは比べ物になりません」と話しています。
これを踏まえてチームは次のような新説を提唱しました。
「クローヴィス文化の狩人たちは槍を地面に固定した状態で保持し、突進してくる動物に突き刺したのではないか」
チームはパイク戦法が古代から使われていたことを確かめるべく、歴史学や民族誌の文献を広く調査。
その結果、パイク戦法は数千年前から実践されており、古くは古代ギリシャの歴史家クセノフォンが「大きなイノシシを狩るためにパイクを使っていた人々がいる」ことを書き残しています。
文字媒体として残っているものでも、2000年以上前にはすでにパイク戦法が使われていたわけですから、もっと以前から狩りの手法として実践されていておかしくありません。
高度な技術力は必要ありませんし、むしろ槍投げを修得するよりも労力は少なく済みます。
そこでチームは最後に、クローヴィス文化の槍でパイク戦法が実践できたかを探るべく、簡単な実験を行いました。