100年続く「人工流星群」となるかも⁈
チームは今回、ディモルフォスから発生した塵や岩石の破片が太陽系内にどう拡散されるかをシミュレーションしました。
LICIACubeの観測データに基づき、計300万個の破片の大きさを直径30マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)、0.5センチ、10センチの3つにグループ分けし、それぞれが毎秒500メートルまでの速度で拡散したときの様子を分析。
この試算にはNASA所有のスーパーコンピューターが使用されています。
その結果、ディモルフォスの破片は今後7〜13年以内に火星に到達する可能性が非常に高いことが判明したのです。
さらにこれらの破片が火星の大気圏に突入すると、大気中の原子や分子と衝突することで光るプラズマが発生し、流れ星として見えると推定されました。
つまり、DARTミッションで発生した破片は、史上初となる”人為的に生み出された流星群”となるかもしれないのです。
しかもチームの試算によると、これらの破片は軌道周回しながらは断続的かつ周期的に火星にやって来て、100年続く流星群となる可能性もあるといいます。
流星群とは彗星が軌道上に残した塵の中に、地球が突入することで発生しています。
彗星は氷を多く含むため、太陽の熱によって少しずつ崩壊しながら宇宙を飛んでいます。そのため多くの塵を残すのですが、そこに惑星軌道が重なると、惑星に飛び込んだ塵が次々大気中で燃え尽き流星になるのです。
そのため、DRATミッションが生んだ塵が惑星の軌道上に来れば流星群になるのは不思議なことではありません。
その一方で、最も高速で移動する粒子の一部は今後10年以内に地球にも到達するのではないかと推測されましたが、火星ほど確かではなく、目に見える流星群が発生する確率は低いかもしれません。
もしかしたらこの破片が地球に被害を及ぼすのでは? と心配する人もいるかもしれませんが、上記の通りのためディモルフォスから発生した破片が地球に影響を与える可能性はないでしょう。
むしろ史上初の人工の流星群を肉眼では確認できないのが寂しいですね。
とはいえ今回の研究結果は、小惑星の衝突を避けるためには、単純に衝突体をぶつけて軌道をズラせば済む話ではないことを指し示してくれました。
今回の欠片は非常に小さいものでしたが、小惑星から発生した塵や岩石の副産物が地球に飛来して、少なからぬ被害を与える恐れはあるからです。
綺麗な流れ星が見えるくらいならいいですが、かなり大きな小惑星の断片が直撃すると、地上の一都市を壊滅させるほどの被害が出てもおかしくありません。
DARTミッションを安全に遂行するには、小惑星の破片についても考慮しなければならないようです。