脳は「愛情の違い」をどう感じているのか?
愛情は私たちにとって最も大切で強い感情のひとつです。
愛情は親子供、恋人、友人といった人同士の絆を深めるだけでなく、動物や自然との良好な関係を保つ上でも深い影響力を持っています。
私たちは様々な対象に向けられる感情を同じ「愛」という言葉で言い表すことができますが、その一方で、脳がそれぞれの愛情をどう表現しているのかはわかっていませんでした。
愛情を感じている以上、私たちの脳内のどこかが活性化しているはずですが、例えば、恋人への愛情とペットへの愛情で活性化する脳領域は違うのか、また活性化の程度にはどのような差があるのかは詳しく解明されていません。
そこで研究チームは今回、恋愛パートナー・自分の子供・友だち・見ず知らずの他人・ペット・自然という6つの対象に愛情を感じている際の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて測定しました。
本調査では、フィンランド在住の一般成人55名(女性29名・男性26、28歳〜53歳)を被験者としています。
全員が心身ともに健康で、恋愛パートナーと交際しているか、結婚していて子供が1人以上おり、約半数は何らかのペットを飼っていました。
被験者にはfMRIで脳スキャンを受けている間、事前に聞かせた「愛情に関するシナリオ」か「特定の感情を刺激しない中立的なシナリオ」のいずれかを頭の中でイメージしてもらいます。
また口頭での説明の後にはそのシナリオに相当するイメージも見てもらい、脳スキャン中にシナリオで誘発された感情に浸るように指示されました。
シナリオの具体例は例えば、中立的なものだと「ぼんやりと歯を磨いている」とか「バスの窓から何の気なしに外を眺める」といったものです。
愛情に関するシナリオでは、親から子供への愛情だと「あなたは今、生まれたばかりの子供を初めて目にしています。赤ちゃんは元気で明るく、あなたの人生における最高の奇跡です。あなたは赤ちゃんへの深い愛情を感じています」といったものです。
これを6つの対象で行い、中立的なシナリオと比較しながら、愛を感じたときに活性化する脳領域をまとめました。