電離層で生じる異常事象とは
電離層とは上空約60kmから800km高度に存在する、地球の大気と宇宙空間の境目に位置する領域であり、電波を反射する性質があります。
これまでに大地震が起こる前には、震源上空の電離層で電子数の異常増加が起きることが知られていました。
例えば日本では、2011年の東北沖地震、2016年熊本地震では、地震の発生直前に震源付近の電離層上空で異常が観測されたことがあります。
下図は、熊本地震の発生時刻の40分前(2016年4月16日0時45分)に、観測された上空の電離層の電子数の異常増加について、全国規模の評価結果を示したものです。
異常と判定された赤色の点が熊本県上空に集中していることが分かります。
また地震のときには、電離層の位置がが20km下方へ移動したり、中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)の速度が遅くなる、という事象も観測されています。
MSTIDは一種の波動であり、その異常はGPS信号や無線通信などにも影響を与えることが知られています。
このようなタイミングの一致は、地面の異常である地震と空の異常である電離層の乱れが無関係ではない可能性を示しています。
しかし電離層での電子の動きが地震と関わる詳細なメカニズムについては明らかにされていませんでした。
そこで、京都大学の研究者たちは地震と電離層の変化の因果関係を突き止めることにしました。