AI活用により「6カ月で303点」の地上絵を新たに発見!
ナスカ台地での現地調査を効率的に進めるには、地上絵が分布している可能性が高い場所を特定する必要があります。
そこでチームはAIの助けを借りて、飛行機から撮影した膨大な量の空中写真を分析することにしました。
上空から撮影した地上の画像データをAIに分析させて、その形状から地上絵の存在を特定するのです。
このAIを駆使した調査方法により、地上絵が存在する可能性の高いエリアを効率的に見つけることが可能となりました。
そしてAIにより合計1309件の有力な地上絵の候補が提示され、その約4分の1について現地調査を行った結果、わずか6カ月間で合計303点の新たな地上絵を発見することに成功したのです。
これは従来の発見率より16倍も高い数字だといいます。
一挙に303点の地上絵が見つかったことで、既知の地上絵の総数はほぼ倍増したことになりました。
こちらが新たに発見された地上絵の数々です。(地上絵はわかりやすいように白線でなぞられています)
地上絵は2タイプに分かれる!その目的の違いも
さらに地上絵のサンプルが大量に増えたことで、ナスカの地上絵は主に2つのタイプに分けられることが明らかになってきました。
1つは大型サイズの線状に描かれた「線タイプ」で、もう1つは小型サイズの面的に描かれた「面タイプ」です。
線タイプには有名なコンドルやハチドリ、クモといった野生動物が含まれます。
また線タイプは、直線や台形によって構成された神聖な場所に向かう巡礼路周辺に描かれていました。
これは「複数の集落による共同体レベルの儀礼活動に利用された可能性が高い」ことを意味しているといいます。
一方の面タイプは人間自身や人間によって飼育された家畜が主に描かれていました。
研究者いわく、面タイプはナスカ台地の曲がりくねった小道の側に描かれる傾向があり、一種の「掲示板」のような役割を果たしていた可能性が高いといいます。
つまり、大型の線タイプのような共同体レベルの儀式のためではなく、個人あるいは小規模なグループの儀礼活動に使われていたと見られます。
今回の成果を踏まえてチームは「AIの能力をさらに向上させることで、より多くの地上絵の発見につながるだろう」と述べています。
またナスカ文化は文字媒体を持たなかったため、土器や壁、布などに描かれた絵の組み合わせに、社会的に重要な情報が書き込まれていることがあります。
したがって、ナスカの地上絵の種類や分布をより詳しく明らかにすることで、ナスカ社会にとって重要な文化的背景を解明できるかもしれません。