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オートミールに湧いた「虫」でアナフィラキシーショック!日本初の症例報告 (2/2)

2024.10.02 Wednesday

前ページアレルギー反応が起こる仕組み

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オートミールに混じった「ヒラタチャタテ」で国内初のアナフィラキシー

2021年3月、東邦大学医療センター大橋病院に一人の患者さんが運び込まれました。

報告によると、患者さんはオートミールを食べた30分後に全身に紅斑が現れ、下痢や嘔吐が起こり始めたという。

来院時には他に、頻脈(ひんみゃく:脈拍数が異常に多い状態)や口元のチアノーゼ(酸素不足で皮膚が青っぽく変色する症状)が見られたことから、アナフィラキシー反応を起こしていると診断されました。

医療チームは原因を特定するため、患者さんのアレルギー反応を調べましたが、新品のオートミールでは陽性反応が出ませんでした。

となるとオートミールを食べたこと自体が問題ではないことになります。

そこで患者さんが実際に食べたオートミールを顕微鏡で観察した結果、「ヒラタチャタテ」の混入が確認されたのです。

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ヒラタチャタテによるアレルギー反応(左)とオートミールに混入したもの(右)/ Credit: 東邦大学 – オートミールに混入したヒラタチャタテの摂取によるアナフィラキシーの症例を日本で初めて報告(2024)

ヒラタチャタテ(学名:Liposcelis bostrychophila)は室内環境において最もよく見つかる小さな虫で、日本全国にいます。

体長は1ミリ弱で、穀物やカビなどの餌があり、適度な温度と多湿の条件が揃うと、大量に繁殖します。

ヒラタチャタテはどこにでもいる平凡な虫であり、これまでは何らかのアレルギー反応を起こす「アレルゲン(抗原)」としてはほとんど注目されてきませんでした。

ところがチームが新たに調べたところ、ヒラタチャタテにのみ特異的に存在すると見られる抗原「Lip b 1」を検出。

さらに患者さんの血液を調べると、Lip b 1と結びつくIgE抗体が見つかったことから、今回のケースは「オートミールに混入したヒラタチャタテの経口摂取がアナフィラキシーの原因である」と結論づけられたのです。

この症例は日本国内では初となりますが、海外では2例が確認されています。

いずれも同じくオートミールに混入していたことから、チームはヒラタチャタテの誤食で生じるアレルギー反応を新たに「オートミール症候群」という名称で呼ぶことを提唱しました。

「オートミール症候群」を防ぐには?

ヒラタチャタテは私たちの身近に普通にいますから、今回の患者さんのように、Lip b 1抗原に結びつくIgE抗体を持つタイプの人であれば、誰でも「オートミール症候群」を引き起こす恐れがあります。

特にヒラタチャタテはハウスダストが蓄積した室内環境で発生しやすいため、たとえ製造の段階で商品に混入するなどの問題が起きていなくても、自宅で開封した際に商品に入り込んで、保存中に繁殖してしまう恐れがあります。

研究チームによると、ヒラタチャタテは10℃以下の温度や55~65%以下の湿度では生育できないとのことなので、例え常温保存が可能な食品であっても、基本的には冷蔵保存することが望ましいようです。

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常温保存が可能なものでも冷蔵保存するのが安心/Credit:canva

それから最も重要な点はオートミールや粉物食品を保存する際は、ジップロックに入れたり、しっかり開け口を閉じるなどの管理を怠らないことです。

チームは今回の知見を受けて「アレルギー疾患の予防と室内環境管理に新たな視点を提供し、公衆衛生の向上に貢献する」ことを期待しています。

室内の掃除や定期的な換気を怠っている人は、特にこうした問題に注意しましょう。

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