アレルギー反応が起こる仕組み
そもそもアレルギー反応とは、私たちの体に備わっている免疫システムが過剰に働いてしまうことで起こるものです。
免疫システムの過剰反応は個々人の体質や持病によって異なり、本来は危険のない異物に対して敏感に反応してしまいます。
アレルギーの原因となる物質が「アレルゲン(抗原)」です。
アレルゲンが体内に入ると、免疫システムが異物とみなして排除しようとし、「IgE抗体」という物質を作り出します。
このIgE抗体ができた後に再びアレルゲンが体内に入ると、IgE抗体がそれにくっつき、免疫細胞の一種である「マスト細胞」からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、アレルギー反応が起こるのです。
ダニの誤食で起きる「パンケーキ症候群」
食品に混入した害虫を誤って食べてしまっても、何らかの健康被害が発生することは比較的稀です。
しかしながら日本では主に、ダニの誤食によって引き起こされるアレルギー症例がいくつか報告されています。
例えば、2010年に報告されたケースでは、当時28歳の女性が開封後に常温保存していた「お好み焼き粉」でもんじゃ焼きをしたときに強いアレルギー反応を起こしました。
食べている最中に喘息のような症状が起こり、15分後には嘔吐。30分後には腹痛を起こして緊急搬送されています。
病院に着く頃には意識がもうろうとしており、顔の腫れや全身の紅斑(こうはん)が起こっていました。
点滴治療を受けた後、女性の症状は2時間後には改善しています。
女性が食べたお好み焼き粉は数カ月前に購入されたものであり、中を調べてみると1グラム当たり50匹ものコナヒョウヒダニが見つかったという。
アレルギー反応が起きた原因を特定するため、女性のアレルギー反応を調べたところ、未開封のお好み焼き粉に対しては陰性でしたが、ダニのアレルゲン(抗原)に対しては強い陽性を示しました。
このことから「女性はダニを誤食したことによるアナフィラキシー反応(※)を起こした」と断定されています。
(※ アナフィラキシーとは、短時間で全身に発症する強いアレルギー反応のこと)
同じ症例は他にも日本国内で数十例知られており、その大半はお好み焼き粉や小麦粉、パンケーキミックスなどに混入したダニが原因です。
粉物に多いことからこの症状は「パンケーキ症候群」などと呼ばれています。
このようにダニの誤食によるアレルギー反応はよく知られていましたが、新たに報告された症例は「ヒラタチャタテ」というアレルゲンとしては注目されてこなかった平凡な虫によるものでした。