若返りの秘術を持つ「ムネミオプシス・レイディ」
ムネミオプシス・レイディ(Mnemiopsis leidyi)は有櫛動物(ゆうしつどうぶつ、クシクラゲ類とも)というグループに属しており、勘違いされやすいのですがクラゲではありません。
クラゲは刺胞動物(しほうどうぶつ)の一グループです。
ムネミオプシス・レイディは体長10センチほどで、南北アメリカ大陸の大西洋沿岸を原産地としていますが、現在ではヨーロッパの海域にも広がっています。
彼らは繊毛が数万本も束ねられてできた「櫛板(くしいた)」という運動器官を持っており、これを動かすときに光の反射の加減が変わることで虹色にピカピカと光ります。
その姿はまるでUFOのようです。
実は今年8月に報告された研究で、ムネミオプシス・レイディは”若返りの秘術”を持っていることが示されました。
彼らの生活環(ライフサイクル)は、最初に両親の交配によって生じた「受精卵」からスタートし、24時間かけてふ化した自由遊泳性の幼生「シディッピド(cydippid)」となります。
シディッピド期間には獲物を捕らえる2本の長い触手がありますが、成長するにつれてなくなり、「ローベイト(lobate)」と呼ばれる成体となります。
ところがノルウェー・ベルゲン大学(University of Bergen)の研究で、成体のムネミオプシス・レイディを飢餓状態にさせたり、一部組織を切り取って傷つけたりすると、シディッピドの状態に戻って、そこから再びローベイトへの成長をやり直したのです(BioRxiv, 2024)。
これは体が傷つくたびに何度も繰り返すことができ、理論的に言うと、ムネミオプシス・レイディは「不老不死」の能力を手にしていると見ることができました。
同じ能力を持っているのは他にベニクラゲくらいです。
これだけでもムネミオプシス・レイディが自然界で特別な存在であることがわかりますが、さらに驚くべき新能力が明らかになりました。
それが仲間同士のフュージョンです。