19世紀以降、人間の平均寿命は2倍に延びた
19世紀に生きた人々の平均寿命は30~40歳でした。
当時は乳児死亡率が非常に高く、多くの子供が5歳までに亡くなっていました。
またコレラ、結核、赤痢などの感染症が広く蔓延し、抗生物質が存在せず、医療も未発達だったため、若くして多くの人が亡くなりました。
労働環境も劣悪な場合が多く、不衛生な環境と栄養不良により、健康が損なわれていました。
だからこそ、19世紀後半になってこれらの問題が改善され始めると、平均寿命はみるみる延びていきました。
平均寿命は、社会全体での人間の寿命を平均したものですから、医療の発展や公衆衛生環境の改善によってどんどん延びていきます。
当然医療が進歩すれば最大寿命の延長にも貢献します。
近年の日本では100歳を超えるお年寄りの数が、昔に比べてかなり多くなったという印象を持つ人は多いでしょう。
そのため、19世紀から21世紀初頭(現在)にかけて、世界のすべての地域で平均寿命が2倍になりました。
例えば、長寿の国の1つである日本では、男性の平均寿命が81歳、女性は87歳と、昔とは比べ物にならないほど長生きするようになりました。
しかし、このようして寿命が延び続けている状況で、疑問が生じます。
「この平均寿命の延びはいつまで続くのか?」というものです。
これは、「人間の寿命の限界はどこなのか?」と言い換えることもできます。
2023年のアメリカ・ジョージア大学(University of Georgia)の研究では、最長寿記録に焦点を当てています。
その研究では、これまで25年以上、最長寿記録(122歳)が更新されていないものの、「近いうちにそれが更新されるかもしれない」と報告されています。
1910~1950年に生まれた人々は、現在70~110歳ほどですが、第二次世界大戦後の医療の進歩や公衆衛生政策の改善の影響を受けた人々は、さらに人類の最長寿記録を更新する可能性があるというのです。
とはいえ、実際に長らく最長寿記録は更新されていないため、人類の生物的な寿命は限界に近づいている可能性があります。
また、この研究はが平均寿命ではなく最長寿記録に対する調査だったため、ここから「人間の平均寿命の限界」について議論することはできませんでした。
そこで今回、アメリカのイリノイ大学シカゴ校(UIC)に所属するS・ジェイ・オルシャンスキー氏ら研究チームは、複数の大学と共同で、長寿の国に焦点を当て、それらの国の人々の平均寿命が最近どのように変化しているか調査することにしたのです。
実際私たちの疑問は、極端に長生きする人の限界よりも、自分を含め人類全体の平均寿命の限界はどこにあるのか? という方が気になる人は多いでしょう。
では、人間の平均寿命に限界はあるのでしょうか?