過去30年で平均寿命の延びが大幅に鈍化している!「人生100年時代」は来ない
研究チームは、1990年から2019年までの長寿国上位9カ国(日本、韓国、スイス、オーストラリアなど)とアメリカの死亡率と平均寿命の傾向を調査しました。
(2019年までの期間が採用されたのは、新型コロナウイルスによる例外的な影響を排除するためです)
その結果、世界で最も長生きな人々の平均寿命は、1990年以降、平均6年半の伸びであることが分かりました。
平均寿命は19世紀から20世紀前半にかけて急速に延びましたが、直近の30年間では延びが大幅に鈍化していたのです。
1990年に一部の科学者は、「それまでの急速な延びが今後も続く」と予想し、多くの人が100歳前後まで生きる「人生100年時代」が来るとさえ主張していました。
しかし、オルシャンスキー氏ら研究チームの最新の研究によると、「人生100年時代」は来ないことになります。
彼らの予測によると、「今世紀中に100歳まで生きる人の割合が、女性で15%、男性で5%を超える可能性は低い」ようです。
この結果を受けてオルシャンスキー氏は、「現代でも医学は猛スピードで進歩しているにもかかわらず、それらは寿命を少しずつ伸ばしているだけであることが証明されました」と述べています。
また、オルシャンスキー氏は、1990年の自身の研究で、「人類の平均寿命は85歳前後であり、限界に近づいている」と報告しており、今回の34年越しの研究によって、その発言の正しさを示したことになります。
そして「人生100年時代」が来ないという今回の結論は、それを元に考えられてきた保険や資産運用ビジネスの根幹を揺るがすものとなるでしょう。
結論として、「人類の平均寿命は限界に達したかもしれない」と言えます。
極端に長生きする人はいるものの、どんなに医療が進歩しても、人類が生物として達成可能な寿命の限界は、結局85歳前後なのかもしれません。
現代を生きる私たちは、なんとなくこの事実に気づいていたのではないでしょうか。
それゆえ近年では、「もっと長く生きたい」というよりも、「健康的で充実した生活を送りたい」と願う人が増えてきました。
オルシャンスキー氏も、「科学者は、ただ寿命を延ばすことではなく、健康に過ごせる年数を延ばすことに軸足を移すべきだ」と主張しています。
身体がほとんど動かない状態で何十年も生き、そこに数年を追加するのではなく、20代のような健康状態で40代まで過ごせるようにしたり、60代の健康状態で80歳まで過ごせるようにしたりすることが大切だというのです。
「もっと長く生きたい」という19世紀の人々の願いをある程度かなえた科学は、はたして今後、21世紀の私たちの願いもかなえてくれるでしょうか。