渡来人の遺伝的ルーツを解明!今日の「韓国人」に近い
土井ヶ浜遺跡は山口県の西端、下関市の豊北町(ほうほくちょう)にある弥生時代の遺跡です。
本調査では、この遺跡で発掘された約2300年前の弥生時代人の遺骨を対象としました。
土井ヶ浜遺跡ではこれまでに約300体の遺骨が出土しており、それらの形態を調べてみると、弥生時代人は縄文人に比べて顔が長く、平坦な顔つきをしており、平均身長が2〜3センチ高くなっていたことがわかっています。
これらは渡来人のDNAによって付け加えられた特徴のようです。
チームは今回、土井ヶ浜の弥生人骨からDNAを抽出し、全ゲノム配列を解析することに成功しました。
そして渡来人のルーツを明らかにするため、縄文人・古墳時代人・現代日本人、さらに東アジア系および北東シベリア系集団のゲノムデータと合わせて統計解析したところ、次のことが確認されています。
(1)土井ヶ浜の弥生時代人は、現代日本人と同様に3つのゲノム成分を有していた
(2)土井ヶ浜の弥生時代人は、解析した集団の中で古墳時代人に最も遺伝的に近く、次いで現代日本人、古代韓国人、現代韓国人の順に近縁であった
これを踏まえてチームは次に、東アジア系および北東シベリア系の両方のゲノム成分を有する「現代韓国人」を日本列島に渡来した集団と仮定し、その集団が縄文人と混血して現代日本人が生まれたというモデルを評価しました。
その結果、この単純でシンプルなモデルが見事に、土井ヶ浜の弥生時代人、古墳時代人、および現代日本人のゲノム成分をうまく説明できることが判明したのです。
これらの結果は、東アジア系と北東シベリア系のゲノム成分をあわせもつ集団が弥生時代に朝鮮半島から日本列島に流入し、縄文人と混血して誕生した集団が現代日本人の祖先となったことを強く支持しています。
つまり、渡来人は今日の韓国人に近い東アジア起源であり、彼らが弥生時代に日本に流入し、土着の縄文人と混血したことで今日の日本人が誕生したと考えられるのです。
本研究の成果から、渡来人の具体的なルーツが解明されたことで、現代日本人の遺伝的な形成過程に対する理解が一層深まることが期待されています。
これまでの予想通り朝鮮半島から来た渡来人と縄文人の混血が日本人のルーツという考え方が変わるわけではありませんが、渡来人の遺伝的なルーツが明らかにされることで、よりはっきりと私たち日本人に至るまでの古代の人々の流れが見えてきました。
今日の私たちはどこから来て、どのように誕生したのか、その遺伝的な道筋が完全解明される日は近いでしょう。