規制の影響は
幕府による階数規制は、都市の成長に伴う床面積拡張の要求と次第にギャップを生み、町家の立体化を抑圧していきました。
しかし、そんな規制に黙って従う江戸っ子ばかりではありません。
外見は2階であるものの、実は中二階を設けた、いわゆる「脱法建築」が多く現れたのです。
これらの建物は重厚な瓦屋根を載せ、防火壁として卯建を備え、黒漆塗りの外壁で固められるなど、火事に備えつつも、どこか不格好な「江戸趣味」の建築様式を生み出しました。
また、商人たちは高さの制限を受けた代わりに、内装の豪華さで競うようになったものの、これも度重なる倹約令で抑え込まれることとなります。
また17世紀後半から都市流入人口が増え、裕福な商家では多くの使用人を抱え、町屋の2階や裏長屋に彼らが住むようになります。
こういった住居は非常に狭く高密度であり、非常に劣悪な住環境にあったのです。しかし階数規制は一向に解除されることはなく、江戸幕府最末期の1866年にようやく解除されました。
もし幕府の規制がなかったならば、江戸の都市はより立体的で、活気ある風景が広がっていたかもしれません。