問題は「体罰そのもの」ではなく「体罰の乱用」にある
今回の研究結果と、これまでの体罰に関する研究結果に違いが生じたのはなぜでしょうか。
ラゼレール氏はその理由を、「これまでの研究は、効果的なしつけとそうでないしつけを区別してこなかった」と説明しています。
薬などの医学分野の研究では、薬の投与量や、最も効果を発揮する条件が一貫して定義されるものです。
しかし、しつけに関する研究では、そのような定義づけがほとんどなされてこなかったというのです。
これは、実際にしつけを行う親、その効果性を論じる人々にも当てはまります。
これまで「体罰」という「しつけ」は、明らかに誤った方法で使用されてきました。
「しつけ」という名目で、親が怒りに任せて何度も叩いたり殴ったりすることがありました。
「スパンキング・お尻叩き」ですら制御されず、明確なルールもなく、親や先生たちの気分のままにそれが実施されたり回数が増えたりしました。
この点について、ラゼレール氏も次のように述べています。
「明らかにスパンキングは誤った判断で子供に下されており、これが子供に有害な影響を及ぼしていた可能性があります。
スパンキングが、あまりに厳しく、あまりに頻繁に、無秩序な子育てのアプローチの一部として用いられると、子供に有害な影響を及ぼします」
歴史を通じて「制御されない体罰」が横行した結果、現代で「体罰そのものを禁止する考え」が広まっているのも納得できます。
今回の研究では、「年齢や方法、頻度などが正しくコントロールされた体罰は、子供に悪影響をほとんど及ぼさず、やや良い結果をもたらす場合もある」と分かりました。
単に体罰の使用を親や教育者側に容認すれば、制御できずに乱用されてしまうことは歴史が証明していますが、だからといって完全に禁止してしまえばこれも良い結果に繋がらない可能性があります。
体罰の効果と影響が正しく理解されなければ、子供の問題行動を改善できなくなったり、問題のない親が虐待者として裁かれてしまったり、虐待をしつけとして言い逃れされたりという状況が続いてしまいます。
今回の研究はこうした問題に一石を投じ、私たちに新たな課題と疑問を投げかけています。