エアロゾル監視のRIAMシステムとは
新型コロナウイルスのパンデミックでは、空気感染が大きな問題として浮上しました。
感染者が息を吐くたびにウイルスを含む微粒子が発生し、それらがエアロゾルという非常に小さな粒子となって空気中を漂います。
下図に示すように、このエアロゾルは最大10メートル先にまで拡散し、数時間にわたり空気中に留まることができるため(各ウイルス量が半分以下に減少するまでの時間は、常温で、新型コロナウイルスで1~3時間、インフルエンザウイルスで0.5時間から12時間、RSVで0.5時間以上)、周囲の人々に感染を広げる危険があります。
しかも、これらのウイルスは病院や公共交通機関、学校、バーなど、あらゆる場所でエアロゾルによる感染が確認されています。
このエアロゾルを監視することで、感染リスクの高い場所を特定し、感染拡大を防ぐための迅速な対応が可能になります。
しかし、現行のウイルス検出方法は、現場での即時検出が難しく(現場でウイルスを採取し、研究所で別途PCR検査)、また、精度や感度にも限界があります。
この問題を解決するために、エアロゾル中のウイルスを高感度で検出できるRIAMシステムが開発されました。
このRIAMとは、「リアルタイム・エアロゾル・インテリジェント・モニタリング:Real-time Intelligent Aerosol Monitoring」と呼ばれ、さまざまな状況でのウイルス検出を目的としており、それぞれが異なる用途に応じて設計されています。
まず、このシステムの核となるのが、超高感度のDNA検査用に新たに設計された完全密閉型のマイクロ流体カートリッジと超高感度なPCR検出技術です。
この方法では、キトサンで処理された石英フィルター(微細なエアロゾル粒子やウイルス粒子を捕集)を使ってウイルスのDNAを抽出し、その後、同フィルター上で直接PCR法を用いてウイルス量を検出してます。
この方法により、従来では200〜500コピー/mLのウイルス濃度が必要だったのに対し、RIAMではわずか10コピー/mLという非常に低い濃度のウイルスでも検出可能となりました。
この感度の高さにより、空気中に漂うウイルスの微量な存在さえも見逃しません。
下図に示すように、この研究では、空気感染の状況に応じた3種類のウイルスモニタリングシステム(M-RIAMs、S-RIAMs、R-RIAMs)が開発され、それぞれ異なるシナリオに応じた運用が可能です。
例えば、M-RIAMsは複数のサンプルを同時に分析できるため、広範なエリア(クリニック、患者病棟、会議室等)でのウイルス監視に適しています。
また、S-RIAMsは定置型で、特定の場所で継続的にリアルタイムモニタリングを行うため、人の介入無しに長時間の遠隔監視が可能となっています。
一方、R-RIAMsは移動型(ロボット)で、大規模な屋内空間でのウイルス検出に向いています。
実際にRIAMシステムを使った実験では、新型コロナウイルス患者病棟でのエアロゾルモニタリングが行われました。
コロナウイルスの症状別の各病棟で採取した、エアロゾル中のウイルス濃度を調べたケースでは、ウイルス検出率(ウイルスの存在割合)が患者の軽症から重症までの状態と非常によく一致していることが確認されています。
これは、エアロゾルによる新型コロナウイルスの監視が、感染リスクを評価する上で非常に有効であることを示しています。
全体として、このシステムは空気中のウイルスを高感度で連続的に検出する能力を持っており、特定の場所でのウイルスリスクを正確に評価することが確認されました。