高感度のウイルス検出システムとは
空気感染するウイルスのモニタリングは、感染症対策の鍵を握っていますが、特に超低濃度でのウイルス検出は依然として難しい課題となっています。
そんな中、清華大学の研究チームが新たな技術を開発しました。
それは、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス(A型・B型)、そして呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対して、10コピー/mLという優れた検出感度を有するマイクロ流体カートリッジを搭載したモニタリングシステムです。
このシステムをエアロゾルサンプラーと統合することで、空気中でも驚異の0.83コピー/m3未満の空間分解能を達成し、空気中に浮遊するウイルスをリアルタイムで追跡することが可能になりました。
では、今回開発された検出システムの性能レベルとはどの程度なのでしょうか。
まず、ウイルス検出感度ですが、これは液体中の少量のウイルスに対してどれだけ検出できるかを示す能力を表します。
「10コピー/mL」という数値は、1ミリリットルの液体中にウイルスのコピー数(ウイルス粒子の個数)がたった10個しか存在しない場合でも、その存在を検出できるという意味です。
多くの市販のPCR検査では、検出感度は100コピー/mL~1000コピー/mL程度であり、10コピー/mLという感度は、その約10倍から100倍の精度で非常に微量なウイルスでも検出が可能ということなります。
一方、空間分解能とは、空気中にどれだけのウイルスが存在するかを測定する能力を表します。
「0.83コピー/m³」という数値は、1立方メートルの空気中にウイルスが0.83個存在している場合でも検出できるという意味です。
一般的な空気サンプラーやセンサーの空間分解能は1コピー/m³~10コピー/m³が多く、0.83コピー/m³という性能はそれらよりもさらに精密に空間内のウイルス濃度を検出できることを示しています。
すなわち、このウイルス検出システムは高感度で空気中のウイルス量を検知し、詳細にモニタリングできるシステムなのです。