太陽光を反射し、地球を冷やす「成層圏エアロゾル注入」とは?
温暖化はここ数十年の間に危機的な水準にまで来ています。
すでに海面上昇による島の水没や異常気象による災害の頻発、干ばつによる食糧不足や生態系のバランスの崩壊など、様々な問題が出始めているのです。
そこで国際的に協力し合って温暖化を止めることが人類の喫緊の課題となっています。
その具体的な方法の主軸となっているのは「温室効果ガスの排出量の削減」ですが、他方でもう一つ、効果的な方法として注目されているアプローチがあります。
それが「成層圏エアロゾル注入(SAI: Stratospheric Aerosol Injection)」です。
これは地上約10〜50キロの範囲を指す「成層圏」に、大気中に漂うエアロゾル粒子を散布することで膜を作り、太陽光を効果的に反射させて地上に降り注ぐ日射量を低減する方法を指します。
研究者らが「成層圏エアロゾル注入(SAI)」に注目し始めた背景には、地球の長い火山噴火の歴史の中で、火山から噴射された「二酸化硫黄」のガス膜が何度も地球の平均気温を下げてきたことがあります。
細かな微粒子の二酸化硫黄が上空に留まって膜を作ることで、太陽光が反射されて地上への日射量が減り、温度が下がったのです。
ただし研究者らが指摘するように、二酸化硫黄のエアロゾルを人為的に散布することにはいくつものリスクがあります。
例えば、雨雲が二酸化硫黄を取り込むことで「酸性雨」が多くなったり、成層圏にあって太陽からの有害な紫外線を吸収してくれる「オゾン層」を破壊してしまう恐れがあるのです。
そこで研究チームは二酸化硫黄のようなデメリットを防ぎながら、太陽光を効果的に反射できる物質が他にないかどうかを調べることにしました。
そうして最もベストな材料として該当したのが、なんと「ダイヤモンド」だったのです。