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火星では、乾いた地表下にも「塵を含む氷」が存在し、微生物が生育する環境が予測されています。/ Credit : Canva
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火星の氷の下には微生物が生存できる環境があるかもしれない (2/3)

2024.11.16 Saturday

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生命体が存在する環境条件とは

火星の氷に生命が宿るためには、ただ氷が存在するだけでは足りません。

地表から入ってくる太陽光線が、氷の奥深くまで届き、そこで適切な条件で生物が生きられる環境、いわゆる、「生命居住可能領域」が必要です。

地球ではオゾン層が有害な紫外線をブロックし、氷の中でも安全な光合成が行えますが、火星にはこのバリアがありません。

火星の氷の中で生命が生き残るには、表面で有害な紫外線を防ぎつつも、光合成に必要な「光合成有効放射(Photosynthetically Active Radiation:PAR)」が深層まで届く必要があります。

この「光合成有効放射」とは、植物が光合成に利用できる特定の光の波長範囲を指します。

植物は太陽から届く光のうち、約400~700ナノメートルの波長(可視光)を主に使って光合成を行い、糖や酸素を作り出します。

この研究で見えてきたのは、火星の氷に含まれる塵の含有量が、この「生命居住可能領域」の形成に大きく関わっているという事実です。

塵の量が多いほど、光が遮られ、「生命居住可能領域」は氷の浅い部分にしか広がりません。

例えば、1%もの塵を含む氷の場合、PARが届く深さはわずか数ミリメートルで、光合成には不十分な環境です。

しかし、塵が少ない氷(約0.1%以下)になると、「生命居住可能領域」が深さ数センチメートルから数十センチメートルに広がり、条件によっては光合成も可能となります。

また、氷の粒径も「生命居住可能領域」の厚さや深さに影響します。

粒径が大きい粗い氷や氷河の氷は、光がより深く浸透するため、PARが届く範囲が広がります。

さらに、火星上での氷の分布は、緯度や太陽の位置(太陽天頂角)にも左右されますが、実はこれらの影響は氷の「生命居住可能領域」に対してはあまり大きくありません。

太陽の天頂角が増えても、PARの浸透深さの変化はわずか数センチメートル程度です。

総じて、火星における「生命居住可能領域」の形成には、「塵の含有量」や「氷の粒径」が大きな影響を与えます。

塵が少なく、粒径の大きい氷が存在する場所であれば、生命の存続に必要な条件が揃うかもしれませんが、太陽光が多く遮られる塵の多い氷では難しくなるのです。

コンピュータシミュレーションの結果を下図に示します。

下図では、「塵の含有量」、「氷の粒径」、「火星の緯度」、「太陽天頂角」に対する「氷の深さ」で「生命居住可能領域」の各範囲を示しています。

結果として、「生命居住可能領域」は、「火星の緯度」「太陽天頂角」からの影響は小さく、概ね「塵の含有量」、「氷の粒径」の影響によって決定されています。

例えば、下図に示すように「塵の含有量」が約0.01%~0.1%含まれる氷では、深さ5cm~38cm、より清浄な氷(約10-6 %以下)なら深さ2.15m~3.10mの範囲に「生命居住可能領域」が形成される可能性があります。

すなわち、この範囲がちょうど微生物の生存に適した場所となり得るのです。

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「塵の含有量」、「氷の粒径」、「火星の緯度」、「太陽天頂角」の影響によって、「氷の深さ」に応じた「生命居住可能領域」の範囲が特定されます。同領域に対しては「塵の含有量」、「氷の粒径」の影響が支配的となっています。 / Credit : Aditya R. Khuller et al., Communications Eeath & Environment(2024)

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