断末魔の叫びを奏でる「死の笛」の音とは?
古代アステカ文明は一般に、西暦1428年頃〜1521年にかけてメキシコ中央部に栄えた国のことを指します。
マヤ文明と並んで非常に有名なメソアメリカ文明の一つですが、今から数十年前、メキシコにあるアステカ文明の遺跡で奇妙な遺物が発見されました。
20代男性の骨の中から見つかったその遺物は、粘土を頭蓋骨の形に整形した不気味な見た目をしています。
サイズは手のひらに乗っかるほどで、頭蓋骨の上部に付いた筒状の穴から明らかに笛であることが見て取れました。
そして研究者らは笛の精巧なレプリカを作成して、実際に笛を吹いてみました。
すると頭蓋骨の笛は断末魔の叫び声のような背筋も凍る音を出したのです。
これが「死の笛(Death Whistle)」と命名される所以となりました。
当時、笛を調査した機械工学者のロバート・ベラスケス・カブレラ(Roberto Velázquez Cabrera)氏は、死の笛について「これは普通の楽器ではなく、苦痛に泣き叫ぶ人の声や千人の死者が叫ぶ声を出す」と表現しています。
では、その実際の音を聞いてみましょう。
動画の前半部は死の笛を単体で吹いたときの音(実際の音は50秒辺りから)が紹介され、後半部の1分10秒辺りからは「100個の死の笛を同時に吹いて、その音が近づいてくる際の音」を再現しています。
※ イヤホンを推奨します。音量に注意してご視聴ください。
では、古代アステカ人は「死の笛」をどんな目的で使用していたのか?
それにはいくつかの説があり、特に有名なのは「笛の音で敵を恐怖に陥れて、戦意を喪失させる」というものです。
アステカの戦士たちはおそらく、首から死の笛を下げており、他の民族と武力衝突する際に笛をいっせいに吹くことで、敵軍を怯ませたのではないかと考えられています。
そのシチュエーションを再現したのが先の動画の後半部の音です。
こんな無数の断末魔の叫びが森の奥から聞こえて来れば、勇敢な戦士も思わず尻込みしてしまうでしょう。
(ただ今のところ、戦場や兵士の墓から死の笛が見つかっていないため異論もあります)
この他にも生贄の儀式の際に吹き、死者の声を響かせることで、生贄に捧げられた魂を冥界へ誘っていたとか、異なる笛のトーンを組み合わせることで、意識を高次の状態に移すという呪術的用途があったなどの説が唱えられています。
しかし問題は「死の笛の音が本当に人々に恐怖を与えられるのかどうか」という点でしょう。
音を聞いて「確かに不気味ですね」」とは言えるものの、脳活動から実際にその人が恐怖を感じていることは確かめられていません。
そこで研究チームは今回、人々に死の笛を聞かせて、そのときの脳波を測定する実験を行いました。