ジンベエザメ狩りをする世界唯一のシャチ一族
シャチ(学名:Orcinus orca)は生物学的にすべて同じ一種にまとめられますが、住んでいる海域や習性によって幾つかのタイプに分けられます。
例えば、食性の違いで分けると、小型クジラやアザラシなどを海洋哺乳類を食べるタイプ、ペンギンと魚類を食べるタイプ、シャケだけを食べるタイプなどがいます。
また生息域の違いでも、海岸付近に住むタイプや沖合に住むタイプ、海域を移動しながら暮らすタイプがあります。
シャチはこうしたタイプごとに確固とした集団を形成しており、他のシャチ集団と出くわしても言葉を交わすこともなければ、交流することもありません。
まるで人間のように、それぞれの集団ごとの独自のルールや文化を継承しながら暮らしているのです。
そして今回、ジンベエザメ狩りの秘術が確認されたのは、北アメリカ大陸とバハ・カリフォルニア半島との間の南北方向に伸びる細長い湾「カリフォルニア湾」を拠点とするシャチ一族です。
カリフォルニア湾に生息するシャチ集団は以前から雑食の食性を示すことで知られ、魚やウミガメ、海洋哺乳類を含むさまざまな獲物を狩りしています。
しかしその中でも、特に興味深いシャチ一族がいます。
この一族は1990年代から観察が続けられており、当時からエイやオオメジロザメ、そして稀にジンベエザメを含む軟骨魚類を狩る様子が目撃されていました。
そしてメキシコ国立工科大学を中心とする研究チームがこの一族の追跡観察をしたところ、2018年〜2024年にかけて4度にわたるジンベエザメの狩猟行動が確認できたのです。
4回の狩りのうち3回には「モクテスマ(Moctezuma)」と命名されているオスのシャチが参加しており、またモクテスマと行動を共にしているメスのシャチも度々見られたことから、ジンベエザメ狩りをしているのは同じファミリーであると考えられています。
現状、ジンベエザメを狩猟するシャチ集団は他に確認されておらず、この一族が唯一と見られます。
さらに狩猟行動を映像や画像から分析したところ、一族に伝わるジンベエザメ狩りの秘術の全貌が明らかになりました。