地球上の細胞の数は、砂粒の1兆倍以上
クロックフォード氏ら研究チームは、生態学における「生産性」に着目しました。
生産性とは、生態系における「ある期間あたりの生物生産の量」のことです。
その中でも、二酸化炭素や水といった無機物から新しく有機物が合成されることを「一次生産(基礎生産)」と言います。
例えば、二酸化炭素から糖類などを合成する光合成がこれに該当します。
一次生産は生物の基盤であり、これが無ければ食物連鎖も炭素循環も存在しなかったでしょう。
研究チームは、この一次生産がどのように変化してきたかを理解するために、様々な科学文献を調査し、様々な時点における光合成生物の数と種類、およびそれらが生産した有機物の量を推定しました。
そして、この計算により現代の細胞の一次生産を把握。そこから細胞数を推測できました。
その結果、現在地球上で生きている細胞の総数は、1030個以上だと推定されました。
この数字は、宇宙の星の数の100万倍に相当する可能性があります。
あるいは、「地球上にある砂粒の総数の1兆倍」にあたる可能性があるようです。
ちなみにこの細胞数の大部分を占めるのはシアノバクテリアでした。
また研究チームは、生命の誕生から今日に至るまでの重要な出来事を特定しました。
今から約20億年前、最初の光合成物であるシアノバクテリアが登場し、太陽を利用して酸素を生成し始めました。
そして約8億年前には、藻類が登場し、シアノバクテリアの生産性を追い越しました。
さらに約4億5千万年前には、陸上植物が登場。その生産性は藻類をはるかに上回り、炭素循環と地球全体の生物量が大幅に増加しました。
こうした出来事の特定から、研究チームは、これまでに1039~1040個の細胞が存在してきたと推定しています。
加えて、彼らの計算によると、地球上の生命は、「地球上の炭素をこれまで100回循環させてきた」という。
しかし、「限界が近づいている」ことも指摘しています。
研究者によると、「地球には1041個超える細胞を支える資源がない」のです。
この数字を越えると、生命が炭素を利用する能力が限界に達する可能性があります。
クロックフォード氏は、将来についても触れています。
太陽の進化に伴い、今後数十億年の間に、地球の気候が変化したり、大気中の二酸化炭素濃度が徐々に減少したりすると予測しているのです。
約10億年後には、二酸化炭素濃度が光合成に必要な量を下回り、植物や海洋生物が生存できなるかもしれません。
これは地球の生命活動の停止を意味します。
では、このようなことは本当に生じるのでしょうか。
この研究は生態学における様々な疑問も呼び起こしてり、正確に把握していくためには、今後より多くの調査が必要でしょう。
しかし、イタリアの森林生態学者アレッシオ・コラルティ氏は、この論文で示される数字は、「合理的かつ現実的」だと主張しています。
そして彼は、この論文を「地球上の生命が、その始まりからどのように発展してきたかを描いた、1つの映画のようだ」とも続けています。
この映画がどのような結末をたどるのかは私たちには分かりませんが、様々な研究がパズルのピースを埋めていくように、いずれ全体像を把握できる時がくるのかもしれません。
>生存できなる
できなくなる