時間を否定する「もう1つ」のシュレーディンガー方程式を発見!時間は量子もつれの副産物に過ぎないことを示す
時間を否定する「もう1つ」のシュレーディンガー方程式を発見!時間は量子もつれの副産物に過ぎないことを示す / Credit:clip studio . 川勝康弘
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時間は「量子もつれ」の副産物に過ぎないとする研究結果が発表 (2/2)

2024.12.21 17:00:54 Saturday

前ページ時間は存在するのか?

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時間を否定するもう1つのシュレーディンガー方程式

時間はどんな姿をしていたか?

謎を解明するために研究者たちは、2つのモデル系を用意しました。1つは周期的に振動する「調和振動子」(以下「振動するシステム」)、もう1つは「磁気時計」です。

これら2つの系は直接的な相互作用は行わないにもかかわらず、量子力学的な「もつれ」状態にあります。

もつれとは、お互いの状態が密接に関連し、一方を測定すれば他方の状態についての情報が得られるような特別な関係です。

もつれ状態では、片方の状態が確定すると、もう片方の状態に関する情報も同時に確定するというユニークな特徴があります。

そして振動するシステムは何かが進んでいる状態、つまり「時間の流れ」と結びつけられ、磁気時計は上向き・下向きといったスピンの「向き」が「針の位置」や「時計盤の数字」のような役割を担い、私たちが「今、このくらい時間が経った」と読み取る手段となります。

この2つが量子もつれの関係にある場合、振動するシステムが「高いエネルギー状態」なら、時計(磁気時計)のスピンが「上」を向く、システムが「低いエネルギー状態」なら、時計のスピンは「下」を向く……といった関係が発生します。

研究ではこの2つの量子もつれの状態が調べられ、実際に「振動するシステムのエネルギー状態」と「時計のスピンの向き」の関係が期待通りに対応しているかをチェックされました。

時間を否定するもう1つのシュレーディンガー方程式
時間を否定するもう1つのシュレーディンガー方程式 / Credit:clip studio . 川勝康弘

その結果、ある条件下では、振動が続けば続くほどスピン向きが時間の経過に合わせて変化し、まるで時計が時刻を刻むように機能することが確かめられました。

(※特に磁気時計のエネルギースケールが十分大きい場合に、磁気時計が時間を古典的に記述できるようになる)

さらに興味深いことに、磁気時計の量子状態を部分的に観測(射影)することで、振動する調和振動子の進化を記述する「方程式」を導き出せることがわかりました。

しかも、その方程式はシュレーディンガー方程式の形式を持ちながら、外部の時間パラメータの代わりに、磁気時計の量子状態が「時間」として機能しているのです。

つまり、シュレーディンガー方程式の時間パラメータを、時計系の自由度(量子状態)に依存する形で「再解釈」することができたのです。

より簡易な言い方をすれば「シュレーディンガー方程式の時間要素の代わりに量子状態を当てはめることができた」とも言えます。

驚くのは、こうしたアプローチによっても、シュレーディンガー方程式の構造自体はほとんどそのまま保たれる点です。

通常なら外部から押し付けられるはずの「時間(t)」が、今度はシステム内部の量子もつれによって自然に定義されるわけで、私たちが当たり前だと思っていた「時間」が、じつは量子相関から浮かび上がる「指標」に過ぎないという、新しい見方を示唆しているのです。

この結果は、従来は「外部から与えられる」と思われていた時間を、量子状態そのものが生み出すことを意味します。

このことから研究者たちは「時間は量子もつれの副産物である」と結論しています。

研究者たちは最後に「私たちが時間の流れを感じるのは、物理世界に何らかの「量子もつれ」が織り込まれているからかもしれません。

もし、宇宙のどこにも量子もつれが存在しなかったとしたら──一部の理論では、宇宙の誕生当初はそうだった可能性が示唆されていますが──私たちには何も動いていない「完全に静止した世界」が見えていたはずです」と述べました。

今回の研究により、これまでの考え方に挑戦する新たな時間に対する考えが示されました。

研究結果は、時間がただの進行する概念として私たちに直感的に感じられる一方で、その本質は「量子もつれ」の中に潜んでいる可能性が示唆されています。

量子力学では、物質が互いに独立しているのではなく、相互に絡み合っていることがしばしばあり、これは時間という現象にも深く関わっているかもしれません。

そして「時間は量子もつれの副産物」──この一見大胆な考え方は、私たちの世界観を根本から揺さぶります。

宇宙全体が静止した状態であるとしても、その中の一部分を「時計」として取り出し、その中の量子もつれを利用することで、私たちは「今」という瞬間を感じ、過去と未来を区別することができるのです。

たとえるなら、止まったままの写真の一コマ同士を重ね合わせることで、あたかも画像が動き出したかのような錯覚を起こしているわけです。

もし宇宙に量子もつれが存在しなければ、私たちは動きのない凍結した世界しか認識できなかったかもしれません。

新たな観点は、物理学と哲学の狭間で、私たちが「時間とは何か」を改めて考え直す大きなきっかけとなるでしょう。

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時間は「量子もつれ」の副産物に過ぎないとする研究結果が発表 (2/2)のコメント

おじさん

時間を否定するというか、時間が二次的な概念に過ぎないという話だと思う。時間に方向性があるのはエントロピー増大の法則に基づくというのはかなり前からわかっている。また、今回の実験の系が周期系のように思える。周期系だと、不可逆な変化が無いから、熱力学的なマクロな時間経過が見えない気がするが。
あと、下記は誤訳ではないか。調和振動子の「進化」って何。時間「発展」のことじゃないの。

「振動する調和振動子の進化を記述する「方程式」を導き出せることがわかりました。」

    ロゥレベル・バーチャルマキナ

    面白いですね。調和振動子は私も好きですが、やはりシンプルすぎますよね。なんか、分からないのですが、ご指摘のとおり調和振動子をたくさん集めても意味があって複雑なおもしろいものは出てこないような気がします。ここでいう調和振動子はクォーツのようなイメージなのでしょうかね?

シロヒゲ

古い奴の私は、量子もつれを兄弟盃を交わした兵庫在住の私が、こちらで盃を右に回せば東京の兄弟が必ず同時に盃を左に回しているようなことと理解していますが、今回ご寄稿の相手の振動に合わせて顔が右を向いたり左を向いたりするというのは、限り無く可愛いですね!

    ロゥレベル・バーチャルマキナ

    たしかに可愛いですね。でも時計のようにぐるり一周をしてしまうのだとしたら……

    「ま」人むくぽん

    “時は過ぎゆくとなんじは云うのか。
    さにあらず。あぁ、時はとどまり
    我らは過ぎゆく……”
    (山田正紀 長編作品『チョウたちの時間』より)

まさ

時間とは本当になんなのかわからない。
傾きなのかと捉えている。
傾きがあれば時間経過とともにその傾きの最たる部分に辿り着く。
現象が或る特定の箇所に来た時に特定の現象が発生するがそれを正確には計測できない。できないからその特定の箇所はどこなのかは無視すると、傾きだけが重要になる。時間が流れているから傾いているだけでその最たる場所へ辿り着いてしまう。傾きだけが重要だ。

    ロゥレベル・バーチャルマキナ

    すみません。コメント拝読しました。面白いですね。傾きというのは疎密波でいうところの疎密のようなものでしょうか?傾きが激しければそれだけ密であり、傾きが緩やかであるというときは疎であると。ところでこの疎密であるというのは、私は行列の疎密と関わりがあるのでは?と考えています。行列式を一定値に保ったまま、多数成分が0である疎(そして各値は密)な行列と、多数成分に小さな値を分散させる密(そして各値は疎)な行列のメドレーです。

    「ま」人むくぽん

    〜傾斜10度の坂道を腰の曲がった老婆が
    少しずつ登ってゆく〜

    中島みゆき アルバム曲『傾斜』より

ういお

時間とは、状態が変化するので、それを時間として、認識するだけである。量子もつれを時計として、時間を数式におりこんでしまっているので、時間の要素が消えるのは当たり前。時間があるので、量子もつれが起きるのか、量子もつれがあるから、時間が起きるのか説明できていない。時計があるから、時間があるように見えるだけというのは暴論と思う。

ロゥレベル・バーチャルマキナ

原論文とか絶対読めないから空想なんだけど、おもしろいと思うんだけど、単純に調和振動子とスピンの量子もつれ系ではこうでした、ってだけで全部の量子系で言える話じゃないですよね。あと方程式から表向き時間変数tを排除しましたっていうのとどう違うのか気になった。たとえば60分で360度回る時計だったら180度=30分と分かるので、時間発展を角度変数で書けるよねってなる。

つまり…………古典系で言う軌跡となんかそっくりに感じた。tがこれこれのときxとyはこうだった、と分かるとき、一価関数という条件下では時間変数を排除して、xがこれこれのときyはここにいる、とも表現ができる。

まして調和振動子とスピンとかっていかにもチクタクやってそうな系の選び方をしてるから……なんかここきになる。。って感じになる。

でも!めちゃくちゃ天才の人が書いた論文なのでそうじゃないよっていうのはどっかに書いてあるはず。それか式をみると自明に違うとかありそう。なので原論文は読めないけどChatGPTに読んでもらおうかなと思いました。

ありがとうございます☘️

佐倉 千尋

まさに時間とは『CPU』内部の『プログラム·カウンタ』みたいな物だと言っている。

この『世の中』に『JUMP』や『レジスタ』や『ループ』は存在するのか?

別の例えなら、時間とは『ホログラム』写真を少しずつ目線を変えながら『眺める』様なもの。目線は急激には変えられない。

だから時間は『川の流れにのように』に進んでいると感じられる。

まさ

時間が流れてなかったら
量子がもつれる事も出来ないと思うんだけど

シロ

興味深い

量子もつれによって副次的に時間が発生しているとするなら、我々が感じている時間を生み出しているこの次元の時計はどこに存在するのか
あるいは宇宙が時間に依らず存在しているなら、その正体に触れるか、あるいは辿り着け結末までのストーリーも既に存在している訳だ

手慰みに数学と量子物理学を学び直すのも面白そうだ

Tモリグ

時間とは空間、すなわち距離であるかなと
空間がなくすべてが同じ一点に存在するのであれば、モノの変化はすべて一瞬でつたわり遅れることはない
いわば究極の重ね合わせ状態
しかし現実には空間があって、何かに影響を与えようとしてもすぐそばにあるものと1光年離れたものは同時に同じ影響を与えることはできない
量子もつれによるテレポーテーション効果ではその空間を一部無視することができるので、時間が存在しない世界の一端であるとは言えると思う
つまり量子もつれが時間を生むのではなく、時間を超越したものこそが量子もつれ
と考えると、時間は対称性の破れということになるのかな

ゲスト

自転、公転、老化など量子の変化を時間が流れているように人間が認識しているというだけで、
時間はなく、空間しか存在しないのかもしれない

ゲスト

虫って寿命短いけど
虫からしたら長すぎるかもしれないですよね
数週間でも人間感覚で80年生きてると虫は思ってるかもしれない
虫からしたら人は自然のような悠久なものかも
1秒間に何回も羽ばたいてるし、人間なんかスローモーションもいいところかもね
物理的にに動いてる距離を比較するのが時間だとすると、その結果は同じ感覚を持つ人間同士なら会話になるけど
その話を虫にしたら虫の感覚では人間の感覚は遅すぎて話にならないかもしれない
時間の感覚が生き物によって違うとしたら、異なる生き物間では時間は意味をなさなくて
そこには重力化で速度が変わることを観測したことと同じようなものが働いているとしたら
感覚の違いにはものすごい重力があるということ
でも虫も人も同じ地球の空間にいるのに、それだと辻褄が合わない
時空が歪んでしまう
ダークエネルギーがそのへんを調整してる余白なんじゃないかな
それすら駄目になるとブラックホールが更に調整をかけようとするとかなんとか
すみません、ここまで全部妄想でした笑

通りすがり

量子もつれが時間を感じさせるとか、エントロピーの変化が
時間を感じさせるとか、時間自体は存在しないってことか。
永遠の今、という言葉を想起させますね。過去は記憶にしかなく
未来は希望にしかなく、それらをたどるべき時間は存在しない。
我々と世界には今しかない事はある意味素晴らしい。
物理学ではなく私の心的解釈、心的印象ですがね。

ゲスト

変化が起こるから変化量に合わせて時間を決めることが出来るんではないの

素人以前の妄想人

「時間は量子もつれの副産物」で重力が強い所では時間が遅れるなら、重力は量子もつれを阻害する性質を持つ可能性があるのか?
特異点は量子もつれを許さない性質を持つ場所

ああああ

宇宙が一つの絵のように完成されている、ということは、映画のように、始まりから結末まで確定している?未来は揺るぎなく、もう決定しているのだろうか。

ゲスド

きっと無限に分岐点のあるRPGゲームみたいなもんだよ。
シナリオはすべて用意されているけど、どれを選ぶかは自分次第なんじゃない?

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