第3位:絶対零度を超える負の温度は「この世の何より」も熱い
イギリスのケンブリッジ大学(Cambridge)で行われた研究により、絶対零度を超えて負の温度に達した「この世の何よりも熱い」物体を、さらに全くの未知の状態の「何か」に進化させることに成功しました。
「負の温度」の物体は、熱力学的にどんな高温よりもさらに「熱い」状態であり、たとえば、1億℃の物体に接触させると、負の温度の物体のほうが瞬時に1億℃側へエネルギーを流し込み、逆に「加熱」してしまうのです。
このとき相手の物体に温度制限はなく、理論上は相手が100億℃でも1兆℃でも、さらに無限大でも加熱することが可能です。
このような状態は正の温度の物体では実現不可能です。
負の温度はここ数年で急速に理解が進んでおり、現実的な応用も考えられるようになってきました。
負の温度はここ数年で理解が大きく進み、実用の可能性も示唆されています。ただし、その概念はかなり難解で、「いったいどうやってそんなモノを作るの?」と思われるかもしれません。
新たな研究では、この負の温度状態にするターゲットに、量子力学の分野でも、まだほとんど理解が進んでいない奇妙な量子状態「幾何学的フラストレーション」が選ばれました。
この幾何学的フラストレーションは、ごく最近になって人工的に作り出すことが可能になったばかり。
複数の量子的な状態が同時に混在するため「量子のごった煮」のような様相を呈します。
研究チームは、このごった煮状態を絶対零度付近まで冷やし、そこから一気に「負の温度」へと移行させ、何が起こるのかを実験的に調べました。
量子世界の中でもとりわけ奇妙な量子状態を、温度の世界でもとりわけ奇妙な「負の温度」に移行させ「奇妙」×「奇妙」を実現し、何が起こるかを調べたのです。
イメージとしては、中学生の理科実験でビーカーに試薬を片っ端から投入して大騒ぎしている光景に近いかもしれません。
その結果、従来の物理学の常識では説明がつかないような“新しい何か”が発生し、研究者たちは計測データの解釈に頭を悩ませています。
この記事ではまず、今回コラボする「負の温度」と「量子状態のごった煮(幾何学的フラストレーション)」の両方を分かりやすく解説し、そのうえで研究結果をご紹介します。
(※負の温度や幾何学的フラストレーションをご存じの方は、前半部分を読み飛ばしていただいて構いません)
量子のごった煮の中では何が起こり、負の温度へ移行したときにどんな変化が見られたのでしょうか?