人を食べるべきでない科学的な理由
そもそも生物はヒトも含めて、自分たちの種に有利になるように生存競争を進めていかなければなりません。
その上で人が人を食べることは進化上の観点からするとデメリットだらけなのです。
食人行為のデメリットは大きく分けて3つあります。
1つ目は「狩りのコストが高すぎること」です。
狩猟をする生物はいかに体力を削らず楽に獲物を得られるかをモットーにします。
もし人を好物とする食人族がいたとすると、彼らは自分たちと肉体的および知的に同レベルの相手を狩らなければなりません。
これはウサギやシカ、イノシシを狩るより遥かに労力がかかる上に、間違ったら自分がやられる確率が非常に高いのです。
まず、この狩りのコストという点で食人行為は割に合っていません。
2つ目は「人肉の栄養価が低いこと」です。
これについては英国ブライトン大学が2017年に興味深い研究を報告しました(Nature, 2017)。
ここで研究チームは「食人族が体重55キロの男性を食料にした場合に得られるカロリー量」を試算したのです。
具体的には、心臓は650キロカロリー、肝臓は2570キロカロリー、太ももは1万3350キロカロリー、上腕は7450キロカロリー、脳と脊髄は2700キロカロリーというように各部位のカロリーを計算し、これらを合わせて人体一つの総カロリー量は約12万〜14万キロカロリーになると算出しました。
一見するとすごい高カロリーにも聞こえますが、実はこれは25人の成人男性が半日もつかどうかの栄養しか得られない数字なのです。
それならば、集団で協力した1頭のマンモスを仕留めれば、同じ数の男性が2カ月間暮らせるだけの食料が得られるとチームは述べています。
なので、毎日の栄養を効率的に摂る上で食人行為はまったく向いていません。
しかし最大のデメリットは3つ目にあります。
それが「病気への感染リスクが極めて高いこと」です。
私たちの体は表向き健康そうに見えても、さまざまな細菌やウイルス、寄生虫などが棲みついている可能性があります。
そして重大なポイントは、ある人に感染した細菌やウイルス、寄生虫が同種の人間であれば容易に伝染しうる点です。
例えば、他の動物からヒトにウイルスが伝染するには、そのウイルスに何らかの遺伝子変異が起きる必要があります。
イメージとしては、コンセントのプラグの形がちょっと違う様を想像してもらうといいでしょう。
ある動物には挿せるコンセントでも、プラグの形が違うヒトには挿さらず、感染が起きません。
しかしヒト同士であれば、プラグの形を変えなくともそのまま感染できるわけです。
では日常的に人肉食を続けているとどうなるのか?
この疑問に答えてくれる実例が過去にあります。
南太平洋のパプアニューギニアに先住する少数民族「フォレ族」の事例です。
フォレ族は1950年代まで、日常的に死者の肉を食べて弔う風習を持っていました。
具体的には、死者の筋肉部位を男性が食べて、脳と臓器を女性が食べていたのです。
その中で奇妙な病気がフォレ族の間に広がり始めます。
全身の筋肉が緩んで上手く立てなくなったり、体中が激しく震えて止まらなくなったり、何も口にすることができず、最終的には肺炎で死亡してしまうケースが急増したのです。
この謎の病気は現地で「体が震える」という意味から「クールー病」と呼ばれています。
研究者が詳しく調べたところ、その原因は死者の脳内に潜む「プリオン」という病原性物質にあることが判明しました。
プリオンは周囲の正常なタンパク質を病原性物質に変質させながら、脳を徐々に蝕んでいく恐ろしい物質です。
これが原因でクールー病が発生しており、実際に脳を食べていた女性により多くのクールー病が見られていました。
このように食人行為を日常化させる集団は、いつか必ず何らかの伝染病を引き起こし、破滅の道を歩んでいく運命にあるでしょう。
こうした科学的な理由から「人は人を食べるべきではない」とはっきり断言できるのです。
めっちゃ面白い
カマキリはカリバニズム遺伝子を進化の過程で獲得したのかな? ある面で効率的で自種完結型なのに対し、人間はカマキリと違う方向で進化してくれてよかった、のだろう?
倫理観とも関連しておもしろかったです。
👍🏻
人肉食は コスパ悪いから流行らないという説明が興味深かった
あと 多分 人肉は無理してでも食うほど美味くないのでは?
ミオグロビンは酸素と結びついて赤くなる奴だろ。あれって牛にも豚にもあるし。
DNAしらべたってことなのか?
人間も一種の哺乳類と考えたらね…
でも、決して食べたいとは思いませんが…