ピラニアは人間を襲うのか
ピラニアは確かに鋭利な歯と強靭な顎を持ちますが、その性質は臆病であり、基本的には自分から生きた大型の動物に近づくことはありません。
ピラニアが「人を食べる魚」として知られているのは、メディアによる誇張が原因です。
しかし稀に、限定的な条件で、ピラニアが人を襲うことはあります。
例えば、乾季で川の水位が低く、餌が少ない時期にはピラニアたちが密集することがあり、そのようなストレスのかかる状況で、人間を襲うことがあります。
またピラニアは血液の匂いに非常に敏感なため、出血状態にある人が川の中に入ると、獲物の存在を示す信号としてピラニアを興奮させ襲われる可能性を高めます。
さらにピラニアたちは死肉をターゲットにするので、人が負傷したり溺れたりして弱った状態で水中を漂っていると襲われるリスクが高まります。
実際、2011年にはボリビアで酒に酔った18歳の男性がカヌーから飛び降り、ピラニアに襲われて死亡するという事件が生じました。
また2015年にも、ブラジルで6歳の少女がカヌーの転覆により川の中に落ち、亡くなりました。
彼女はピラニアに襲われており、腰から下の骨が露出した状態で発見されたという。
とはいえ、ピラニアに襲われたことが直接の死因となることは稀です。
ピラニアに襲われる事件はこれまで多く生じていますが、大抵の場合は手や足に軽傷を負うだけで済んでいます。
致命傷になることはほとんどありません。
むしろ、人が川に落ちて溺死し、その遺体をピラニアが食べるケースの方が多いのです。
では、このような動画をどう説明できるでしょうか。
If you fall in this river, the chances of survival is -0.001 pic.twitter.com/ODPpuRzWVv
— JOE 𝕏 (@gani_jonathan) December 14, 2024
動画を見る限り、ピラニアは非常に凶暴で、人間すらあっという間に食べてしまいそうです。
しかし実は、このような光景の多くは、人々が作り出したショーです。
例えば、元アメリカ大統領セオドア・ルーズベルト氏は、1913年にブラジルのアマゾンを訪問した際、「1頭の牛が川に突き落とされ、ピラニアの群れによって食い尽くされ、あっという間に骨になる」という光景を目撃しました。
ただしこれは、地元の漁師たちによって仕組まれたものでした。
彼らはルーズベルト氏に忘れがたい体験をしてもらうため、あらかじめ川の一部を網で封鎖し、その中に大量のピラニアを集め、数日間飢えさせていたのです。
同様に水族館でも、ピラニアを大量に集め、空腹状態にし、興奮させるなら、獲物を食い尽くす光景を作り出すことができます。
この記事で引用した動画の真実は不明ですが、私たちが見かける「ピラニアに食い尽くされる光景」の多くは、自然界そのままの映像ではないのです。
もちろん、だからといってピラニアに危険がないわけではなく、ピラニアが生息している水域には安易に近づくべきではありません。