首なしマイクはなぜ18カ月間も生き続けられたのか?
ニワトリの首をはねると普通は何が起きるのでしょう?
まず、首が切り落とされると、脳は胴体との接続経路をたたれますが、脊髄回路にはまだ酸素が残されています。
脳からの伝達がなくなると、脊髄回路はその酸素を使って、短い時間だけ自発反応を始めます。
神経細胞が活性化して脚が動くので、首をはねられても確かに「走る動作」が起こることはあります。
首をはねられた直後もニワトリが歩き回る事例は今でも珍しくありません。
ただし、それは脊髄回路に酸素が残っている数分の間だけであり、マイクのように18カ月間も生き続けることは不可能です。
では、なぜマイクだけは長期にわたって生き延びられたのか?
これについて、英ニューカッスル大学 行動・進化センターのトム・スマルダーズ氏は2015年に「首なしで生命を維持できた理由を説明するのはそれほど難しくない」と話しています。
スマルダーズ氏によると、ニワトリの脳は非常に小さく、頭蓋骨後部の目の後ろの方に集中しています。
ロイドがふりおろした斧はマイクの目やクチバシを含む頭部の先っぽを切り落としましたが、頭部の後方にある脳の最大80%は切られずに残されたと考えられるのです。
そして残った脳部位において、心拍や呼吸、消化、運動といった身体機能をコントロールする領域が傷付けられずに残ったのでしょう。
しかしこれはニワトリの同じ部位をはねれば、新たな首なしマイクが出来上がるわけではありません。
ニワトリの首をはねると、通常は出血多量で死んでしまうからです。
ところがマイクの場合はおそらく、切断した箇所や切断面が出血を最小限に抑えるのに最適な状態だったことで、奇跡的に血がすぐに固まって出血多量にならずに済んだのだと見られます。
![画像](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2025/02/88b01b81a6434c368309d95f44456c1b-900x600.jpg)
これは本当に異例中の異例であり、意識してやろうと思ってもできることではありません。
実際にこの騒動のさなか、2匹目のドジョウを狙って、飼っているニワトリの首をはねるブームが町で巻き起こったといわれています。
しかしその誰一人として、第2の首なしマイクを誕生させた人はいませんでした。
中にはロイドに「どうやってマイクの首を切ったのか」と聞き出すために、ビールの缶パックを農場に持ち寄る人もいたといいます。
当然ながら、そんなことはロイドも知りません。
首なしマイクは偶然が産み落とした奇跡のニワトリだったからです。