壁を登るサンショウウオ
ハイカイキノボリサンショウウオ(学名:Aneides vagrans)は、北アメリカのカリフォルニア州やオレゴン州の巨大なセコイアの森に生息しています。
特に驚くべきは、地上から最大88メートルもの高さの樹冠で生活できることです。
このような環境では、強い風や急な木の表面を克服するために、高度な登攀技術が必要です。
では、このサンショウウオはどのようにして樹木を登っているのでしょうか。
私たちの身近に存在する生物は、さまざまな方法で壁を登ります。
例えば、ヤモリは、足裏の微細な毛を利用し、分子間力(ファンデルワールス力)でくっつきます。
またアマガエルは、粘液を分泌することで湿った表面でも滑らずに登ることができます。
クモや昆虫は、小さな鉤爪や粘着パッドを使って登攀することで知られています。
実は、ハイカイキノボリサンショウウオの指には、これらの動物とは異なる特徴があります。
これまでの研究では、ハイカイキノボリサンショウウオの指先は四角形をしており、他のサンショウウオよりも広がった形状を持つことが知られていました。
また、指先に血液が溜まりやすい構造になっていることも確認されていましたが、その機能は明らかになっていませんでした。
そこで研究者たちは、このサンショウウオの指先に隠された秘密を探るため、以下の方法で実験を行いました。
まず、サンショウウオの標本を利用し、その指を細かく切り出し、特殊な染色技術で血管を可視化しました。
また、生きたサンショウウオを透明なアクリル板の上で歩かせ、カメラで指先の血流を撮影。
画像処理ソフトを使用し、指先の「赤み(血流)」を数値化することで、血流がどのように壁登りと関係しているか分析しました。