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ハイカイキノボリサンショウウオは指先の血流を操って木を登っていた / Credit:William P. Goldenberg_Blood-powered toes give salamanders an arboreal edge(2025)
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「粘着力じゃない」サンショウウオが壁に貼り付ける不思議な仕組みを解明!

2025.02.04 18:00:01 Tuesday

壁や木の幹を自在に登る生き物といえば、ヤモリやカエルを思い浮かべるかもしれません。

彼らは「微細な毛」や「粘着性の足裏」によって、壁登りを可能にしているのです。

しかし、アメリカ西海岸の森に生息する「ハイカイキノボリサンショウウオ(学名:Aneides vagrans」は、それらとはまったく異なる方法で樹上を移動していることが判明しました。

ワシントン州立大学(Washington State University)のクリスチャン・E・ブラウン氏ら研究チームは、このサンショウウオが「血液の流れを利用して指先のグリップ力を調整している」ことを発見しました。

これは、従来知られていたヤモリやカエルとはまったく異なる、新たな登攀メカニズムの発見です。

この研究の詳細は、2025年1月29日付の『Journal of Morphology』誌に掲載されました。

Blood-powered toes give salamanders an arboreal edge https://news.wsu.edu/press-release/2025/01/29/blood-powered-toes-give-salamanders-an-arboreal-edge/ Take a back seat, gecko feet – blood-pumping salamander toes get a great grip https://newatlas.com/science/salamander-toe-tips-blood-grip/
Vascular and Osteological Morphology of Expanded Digit Tips Suggests Specialization in the Wandering Salamander (Aneides vagrans) https://doi.org/10.1002/jmor.70026

壁を登るサンショウウオ

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木を楽々登ることができるハイカイキノボリサンショウウオ / Credit: Christian Brown(Washington State University)_Blood-powered toes give salamanders an arboreal edge(2025)

ハイカイキノボリサンショウウオ(学名:Aneides vagrans)は、北アメリカのカリフォルニア州やオレゴン州の巨大なセコイアの森に生息しています。

特に驚くべきは、地上から最大88メートルもの高さの樹冠で生活できることです。

このような環境では、強い風や急な木の表面を克服するために、高度な登攀技術が必要です。

では、このサンショウウオはどのようにして樹木を登っているのでしょうか。

私たちの身近に存在する生物は、さまざまな方法で壁を登ります。

例えば、ヤモリは、足裏の微細な毛を利用し、分子間力(ファンデルワールス力)でくっつきます。

またアマガエルは、粘液を分泌することで湿った表面でも滑らずに登ることができます。

クモや昆虫は、小さな鉤爪や粘着パッドを使って登攀することで知られています。

実は、ハイカイキノボリサンショウウオの指には、これらの動物とは異なる特徴があります。

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ハイカイキノボリサンショウウオがどのように壁を登るのか、血液の流れを観察 / Credit: Christian Brown(Washington State University)_Blood-powered toes give salamanders an arboreal edge(2025)

これまでの研究では、ハイカイキノボリサンショウウオの指先は四角形をしており、他のサンショウウオよりも広がった形状を持つことが知られていました。

また、指先に血液が溜まりやすい構造になっていることも確認されていましたが、その機能は明らかになっていませんでした。

そこで研究者たちは、このサンショウウオの指先に隠された秘密を探るため、以下の方法で実験を行いました。

まず、サンショウウオの標本を利用し、その指を細かく切り出し、特殊な染色技術で血管を可視化しました。

また、生きたサンショウウオを透明なアクリル板の上で歩かせ、カメラで指先の血流を撮影。

画像処理ソフトを使用し、指先の「赤み(血流)」を数値化することで、血流がどのように壁登りと関係しているか分析しました。

次ページ指先の血液量が変化することでグリップ力を調整していた

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