集中力を高めるのは「ワークフロー音楽」
研究チームは196人の参加者(18歳から45歳の男女)を対象に、異なる種類の音楽を聴きながら認知課題を実施しました。
参加者が受けたのは「フランカー課題」というテストです。
この課題では、画面上に矢印の列が表示され、中央の矢印が向いている方向をできるだけ素早く正しく判断する必要があります。
周囲の矢印は、中央の矢印と同じ方向を向いていることもあれば、逆の方向を向いていることもあります。
参加者はこれらの干渉(集中力の妨げとなる刺激)を無視しながら、正確に中央の矢印を識別する能力が試されます。
このテストでは、集中力が必要とされるため、音楽の影響を評価するのに適しています。

そして参加者は以下の4つの音楽条件でテストを受けました。
その1:ワークフロー音楽(work flow music)
・強いリズム(例:中程度の速さのテンポ、高いビートの明瞭性、低いリズムの複雑性)
・シンプルな調性(例:キーの明瞭性が高く、メロディやハーモニーの変化が少ない)
・広範囲に分布する周波数エネルギー(約6000Hz以下)
・適度なダイナミズム(例:やや急なアタック、適度なイベント密度)
その2:ディープフォーカス音楽(deep focus music)
・シンプルな調性を持つが、リズムはより弱い(例:テンポが遅く、ビートの明瞭性が低く、リズムの複雑性が高い)
・周波数エネルギーが低く、より制限されている(例:スペクトルの重心、広がり、減衰ポイントが低い)
・より抑えられたダイナミズム(例:穏やかなアタック、イベント密度が低い)
その3:ポップミュージック
・アメリカの音楽雑誌が2021年10月第2週に発表した「Hot 100」プレイリストからサンプリング
その4:オフィス内の雑音
・一般的なオフィス内の背景音となるキーボードを叩く音や社員の話し声、足音が混じったもの
ワークフロー音楽とディープフォーカス音楽はいずれも集中力を高めることを意図して作られたインストゥルメンタル音楽であり、YouTubeなどでも視聴することができます。
ワークフロー音楽の例はこちら。(音量に注意してご視聴ください)
そして各条件での実験結果を比較したところ、ワークフロー音楽だけが参加者の気分を向上させ、情報処理速度を高める有意な効果を持つことが判明したのです。
ワークフロー音楽に特有の「強いリズム、シンプルな調性、広範囲な周波数エネルギー、適度なダイナミズム」は、脳の集中力が高まる「フロー状態」を確かに促すことが示されました。
フロー状態とは、目の前のことに没頭して、時間が経つのも忘れるほど集中し切っている脳の状態のことを指します。
研究者によると、ワークフロー音楽の強いリズムとシンプルな調性が脳に予測可能なパターンを提供することで、認知の流れのスムーズさを促しているのではないかと考察しています。
以上の研究から「ワークフロー音楽」として作られた音楽が、作業の効率を上げるのに有効であることが科学的に証明されました。
集中したいときには、歌詞のある曲や環境音ではなく、リズムが明確で、シンプルなメロディーのインストゥルメンタル音楽を選ぶのが良いかもしれません。

























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