なぜ衝突確率が急上昇したのか?

地球近傍小惑星の軌道は、初期の観測データに含まれるわずかな誤差によって大きな不確実性を抱えることが知られています。
その理由は、軌道計算に用いられる位置や速度などのパラメータが、短期間であっても微小な誤差が長期予測において指数関数的に増幅されるためです。
さらに、これらの小惑星は地球だけでなく、月や他の惑星など、周囲の天体からの重力相互作用の影響も受けるため、軌道が時間とともに微妙に変動しやすくなっています。
そのため、追加の観測データが得られると、軌道の不確実性が縮小され、実際に地球と交差する可能性のある軌道部分が明確になり、衝突確率が大きく修正される場合があります。
最初の推定では1%前後だった2032年末の衝突確率が、追加観測データの反映によって2.1%へと上方修正されたことも、こうした不確定要素の反映といえます。
ただし、天文学者たちは「新たな観測や軌道解析によって、今後確率が下がる可能性も大いにある」と強調しています。
ツングースカ規模の衝突と聞くと恐怖を感じるかもしれませんが、2024 YR4の衝突リスクが100%になったわけではなく、私たちには “事前に対策を講じる余裕”があります。
チェリャビンスク隕石のように突然出現した小惑星のほうが、事前警戒や防衛策をとる時間がなく、より危険です。今回のケースでは、2032年までに衝突リスクがほぼ解消されるかもしれませんし、仮にリスクが高まっても、数年単位の準備期間が確保できると期待されています。