標高が高いと感情を読み取るのが遅くなる?
日常生活では、私たちは瞬時に他人の表情を読み取り、その人が喜んでいるのか、悲しんでいるのか、怒っているのかなどの感情を判断します。
たとえば、職場で同僚が笑顔だったら安心し、しかめっ面だったら機嫌が悪いのかもしれないと推測するでしょう。
このような顔の感情認識能力は、スムーズなコミュニケーションに欠かせません。
しかし標高の高い場所に長く住んでいると、この感情認識のスピードが低下する可能性があることが、いくつかの先行研究で示唆されてきました。
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たとえば、高地に住む人々は、幸福な表情を正しく認識するのが難しくなる傾向があることが報告されています。
また、特に感情のない中立的な表情を、実際には存在しない感情として誤認しやすくなることも知られています。
これらの影響は、主に高地での低酸素環境によるものと考えられています。
高地では酸素濃度が低いため、脳への酸素供給が減少し、その結果、認知機能や感情処理能力に影響を与える可能性があるのです。
これまでの研究では、低酸素環境が精神的健康に及ぼす影響についても指摘されてきました。
特に高地ではうつ病や不安症の発症率が高いことが知られています。
高地で生活することが、脳の働きにどのような影響を与えるのか、研究者たちはこの疑問を解明するために、新たな実験を行いました。