3000万年前のエジプトに君臨した捕食者
エジプトといえば、ピラミッドやスフィンクスが立ち並ぶ砂漠をイメージするかもしれません。
しかし、3000万年前のエジプトはまったく異なる環境でした。
この時代、エジプトのファイユーム地方には広大な森林が広がり、多種多様な動物が生息していました。
恐竜亡き後の時代に、カバやゾウの祖先が湿地帯を歩き回り、霊長類もこの地で繁栄していたのです。
しかし、こうした動物たちは皆、ある恐るべき捕食者の標的となっていました。
この捕食者こそが、今回発見された「バステトドン・シルトス(Bastetodon syrtos)」です。
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この生物は、絶滅した肉食獣のグループ「ハイエノドン目(Hyaenodonta)」に属しており、ヒョウほどの体格で、強靭な顎と鋭い歯で獲物を仕留める超肉食獣(Hypercarnivore)でした。
この動物が食物連鎖の頂点に君臨していたことは、その歯の形状からも明らかです。
ハイエノドン類の特徴的な「はさみ状の臼歯」は、肉を効率的に引き裂くためのものであり、現在のネコ科動物やワニと同じく、食事の70%以上を肉に依存していたと考えられています。
では、なぜこれほど強力な捕食者が絶滅してしまったのでしょうか?