見る角度で表情が変わる人形

古代の人々が作った人形と聞くと、どんなものを思い浮かべるでしょうか。
素朴な形をしたお守りのようなもの?
あるいは、神々や祖先を象った彫像のようなもの?
しかし今回発見されたエルサルバドルの陶製人形は、これまでにあまり見たことのないような特異な特徴を持っています。
それは「見る角度によって表情が変わる」ということです。
研究チームによると、これらの人形を目の高さから見ると「怒っている」ように見え、上から見ると「微笑んでいる」ように見え、下から見ると「怯えている」ように見えるデザインが施されていたのです。
これは単なる偶然ではなく、意図的にデザインされたものだと考えられています。
なぜ、古代の人々はこのような人形を作ったのでしょうか?

エルサルバドルの遺跡と「ボリナス型人形」
この人形が発掘されたのは、エルサルバドル西部のサン・イシドロ遺跡。
ここは、紀元前1000年頃から紀元後250年頃にかけて栄えた「前古典期」の都市遺跡のひとつです。
この遺跡で見つかった人形は「ボリナス型人形(Bolinas-type figurines)」と呼ばれるタイプのもの。
これまで、グアテマラの遺跡で類似の人形が見つかっていましたが、エルサルバドルで発掘されたのは今回が初めてです。
この発見により、当時のエルサルバドルがメソアメリカの広範な文化圏とつながっていたことが示唆されています。
また、これまで考えられていたよりも高度な芸術性と意図的なデザインが施されていたことも明らかになりました。
では、これらの人形は何に使われていたのでしょうか?