暗黒物質の寿命は最低でも「3京年」以上あると判明
暗黒物質の寿命は最低でも「3京年」以上あると判明 / Credit:Canva
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暗黒物質の寿命は最低でも「3京年」以上あると判明 (3/3)

2025.03.11 21:00:26 Tuesday

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暗黒物質が崩壊したらどうなるのか?

暗黒物質が崩壊したらどうなるのか?
暗黒物質が崩壊したらどうなるのか? / Credit:Canva

そもそも暗黒物質は、銀河や銀河団を“重り”のように支える存在とされていて、特に銀河の回転速度を説明するには、星やガスなどの「見える物質」だけでは足りないと考えられています。

もし暗黒物質が、宇宙の歴史の中で崩壊を続けていた場合を想像してみましょう。

銀河を取り巻く暗黒物質が時間とともに減っていけば、銀河間の重力バランスが変わるのは当然です。

特に数百から数千もの銀河が集まる超銀河団などの大規模構造では、“微調整”では済まないほど劇的な変化が起こりうるでしょう。

さらに、暗黒物質が“宇宙の初期から安定的に存在してきた”という前提が崩れると、銀河や銀河団がどのタイミング・規模で形成されたかという宇宙論の根幹にも影響します。

もし暗黒物質が途中で崩壊を始め、光子やニュートリノなどを放出したならば、宇宙背景放射(CMB)のスペクトルや星間ガスの状態にズレが生じ、星や銀河が育つペースが変化するかもしれません。

では、もし仮に「暗黒物質がいま突然消滅したら」どうなるのでしょうか。

実は、太陽系や地球といった局所的なスケールでは、ほぼ影響がないだろうと考えられています。

なぜなら、銀河ハロー全体に広がっている暗黒物質の密度は、地球や太陽の質量に比べると圧倒的に小さいからです。

太陽系内に存在する暗黒物質は、計算によっては地球ひとつ分の質量にも満たないと推定されており、もし一瞬で消えたところで重力バランスに大きな変化は起こりません。

私たちが感じる引力のほとんどは、あくまでも太陽や地球そのもの、あるいは他の惑星によるものなのです。

しかし、銀河規模やさらに大きなスケールでは話が別になります。

銀河全体を取り囲む暗黒物質がもし瞬時に消滅したなら、星々の運動を束ねていた重力的な枠組みが一気に崩れ、長期的には銀河が拡散したり、星団の構造が激変したりする可能性があります。

ただし、こうした変化はすぐに目に見えて起こるわけではなく、数千万年から数億年単位という長大な時間スケールで進むと考えられます。

実際、私たちが日常的に体感するような“即座の影響”はほぼないでしょう。

暗黒物質が崩壊するかどうか、そして崩壊するとしてその寿命がどれほどなのか——これは宇宙がどのように形成され、進化してきたかを理解するうえで重要なカギを握っています。

寿命が長ければ従来の「冷たい暗黒物質(CDM)」モデルをさらに強く支持する一方、もし観測である程度速い崩壊が見つかれば、現在の標準的な宇宙論シナリオを修正する必要が出てくるでしょう。

こうした研究は今もさまざまな観測プロジェクトで行われ、将来的には「暗黒物質の崩壊現場」を直接捉えるかもしれません。

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