火星も青かった?温暖湿潤な世界が広がっていた可能性
今回の研究では、NASAの火星探査車「パーサヴィアランス」に搭載されたスーパーカム(SuperCam)という装置を用いて、火星の岩石を詳細に分析しました。
たスーパーカムは「レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)」という技術を用い、岩石に高エネルギーのレーザーを照射することで、微量の物質を蒸発させ、その際に生じる発光を分析することで元素の組成を特定する高度な技術です。
チームはジェゼロ・クレーターの地表に散在している淡い色の岩石にレーザーを照射することにしました。

これらの岩石は明らかに周囲の地層とは異なっており、風化や侵食などのプロセスによって元の形成場所から運ばれてきたものと考えられます。
周りの茶褐色の地層から浮いて見えることから、チームはこの岩石を「浮遊岩(フロートロック)」と呼んでいます。
そしてレーザー照射の結果、浮遊岩の主成分はアルミニウムを豊富に含むカオリナイトであることが判明したのです。
カオリナイトが形成されるためには、高温多湿な環境が長期間続く必要があります。
このような環境は、一部の微生物生命にとって適した条件となります。
ジェゼロ・クレーター内ではすでに4000個以上のカオリナイトを含む浮遊岩が確認されていることから、火星がかつて「水が豊富で温暖湿潤な世界だった可能性」が示唆されたのです。

火星の環境が過去にどのように変化してきたのかを理解することは、
「火星に生命が存在していた可能性があるか?」
という大きな疑問に答えるための鍵となります。
地球では温暖で湿潤な環境は微生物の繁殖に適していることから、カオリナイトが発見された場所は火星の生命の痕跡を探す上で有力な候補地となります。
NASAは今後、この岩石を採取し、将来的に地球へ持ち帰って分析する「火星サンプルリターンミッション」を計画しています。
もし火星の岩石に生命の痕跡が見つかれば、人類史上最大の発見となるでしょう。