ヒトの脳はどこが特別なのか?
私たちヒトの脳は、他の霊長類とどこがどのように違っているのでしょうか?
知能が高い、言葉を話す、未来を思い描ける……ヒトにはさまざまな能力がありますが、その違いの源を突き止めるのは簡単ではありません。
これまでは主に「脳の大きさ」が高い知能の要因と考えられることがありました。
確かに脳のサイズも知能の高さに関連していますが、サイズだけならヒトより大きな脳を持つ動物はいます。
例えば、ゾウの巨大な脳にはヒトの3倍ものニューロン(神経細胞)が詰まっていますが、ヒトほどの高い知能はありません。

また「前頭前皮質」の発達度合いがヒトらしさの鍵とも指摘されてきました。
前頭前皮質は計画力や意思決定などの高度な認知機能に関わる領域として知られ、そこに着目してヒトと他の霊長類との違いを探る研究が数多く行われています。
実際、脳の進化を比較した過去の研究でも、ヒトでは前頭葉の一部が顕著に拡大していることが示唆されています。
しかし研究チームは「こうした従来の焦点とは異なる場所にヒトならではの秘密が隠されているのではないか」と考え、今回の研究を開始しました。
具体的には、ただ脳の大きさや形を比べるのではなく、どの領域がどのように他の領域とつながっているか、つまり脳内の接続構造そのものに注目したのです。