脳は「小さな宇宙」
脳はそのニューロン(神経細胞)やそれらを結ぶシナプスのあまりの多さから「小さな宇宙」と呼ぶにふさわしい存在です。
ヒトの脳には約860億個ものニューロン詰め込まれており、シナプスの数は100兆以上と推定されています。
これは宇宙全体にある銀河の数をも上回るといわれるほどです。
私たちの脳はこの無数のニューロンやシナプスの間で電気信号をやりとりすることで、思考や記憶、感情といった複雑な働きを実現しています。

その一方で、膨大すぎるニューロンやシナプスの多さから、脳の配線図が完全に把握されたことはありません。
1979年に、著名な分子生物学者のフランシス・クリックは「脳組織1立方ミリメートルの配線図さえ、正確に描くことは不可能だ」と述べました。
しかし数十年の時を経て、クリックが不可能といったことが、可能なものとして現実になろうとしています。
研究チームは今回、わずか1立方ミリメートルのマウスの視覚皮質を対象とし、その配線図を可視化する壮大な試みに挑みました。
この視覚皮質は実に砂粒ほどのサイズしかありません。
この取り組みは、米国政府の高等研究機関IARPA(Intelligence Advanced Research Projects Activity)の支援を受けて進められた「MICrONSプロジェクト」の一環です。