ガラパゴス諸島の小鳥は「凶暴化」&「鳴き声が変化」している!原因は交通騒音だった
2022年、イギリスびアングリア・ラスキン大学の研究チームは、サンタクルス島とフロレアナ島におけるガラパゴスキイロアメリカムシクイの縄張り計38カ所で実験を行いました。
実験では、録音された同種のさえずり音をスピーカーから流し、縄張り侵入のシミュレーションを実施しました。
そして、その一部には交通騒音を付加して比較検証しました。
ちなみに、それぞれの縄張りの位置は、20カ所が「道路から50m以内」であり、18カ所は「道路から100m以上離れた場所」でした。
その結果、道路に近い個体群は、騒音下でより攻撃的な行動を取りやすくなっていることが判明しました。
具体的には、スピーカーに対して急速に接近して威嚇行動を取り、時には物理的な戦闘を辞さない姿勢を見せました。

一方、道路から離れた個体群は、騒音下で逆に攻撃性が低下する傾向を示しました。
これは、騒音によって状況判断が困難になり、積極的な防衛を諦める行動変化と考えられています。
また、さえずりの内容にも変化が現れました。
両島の鳥たちは、道路から縄張りがどれだけ離れているかに関わりなく、騒音実験中に最低周波数をわずかに上げる傾向がありました。
鳥たちは騒音の中でも自分たちのさえずりが聞こえるよう調整していたのです。
さらに、サンタクルス島の個体は、騒音下で歌の長さをのばす行動も示しました。
彼らは、短いタイミングで途切れる交通騒音の隙間を狙って、自らのさえずりを効果的に伝えようとしていると考えられます。
こうした行動の変化は、生存のための柔軟な適応とも取れますが、どちらかというと、「本来の生態からの逸脱」の側面が強いと言えます。
ガラパゴス諸島という、かつては人間活動から隔絶された楽園でさえも、いまや人間の活動が野生動物の行動に重大な影響を与えています。
この研究は、我々人間の活動がたとえ僅かであっても、生態系にどれほど深い影響を及ぼすかを改めて考えさせるものとなりました。