「宴会文化」の起源は霊長類の祖先にあった⁈
今日では世界中のいたるところで「お酒」が飲まれているように、人類は飲酒が大好きな生き物です。
ひとりで晩酌することもあるでしょうが、お酒を飲むときは大抵、仕事仲間や友人、家族と集まって楽しみます。
これが人間に特有の「宴会文化」として世界中に定着しているものです。
宴会文化はこれまで人類が独自に発達させてきた慣習と考えるのが普通でした。
しかし研究チームは、今回の発見から「宴会文化の起源は遠い霊長類の祖先に遡れるのではないか」と、一つの可能性として提案しています。
というのも、これまでの研究で「アフリカ類人猿の共通祖先において、エタノールの代謝能力が大きく向上した証拠」が見つかっており、霊長類の祖先の時点でアルコールを摂取・分解できるような体になっていたことがわかっています。
そこに今回の調査で、チンパンジーが発酵果実を食べるときは決まって仲間と一緒に分け合っていたことから、アルコールを含む食べ物は意図的に仲間と食べるルールが霊長類の祖先の時代からあった可能性が浮上しています。
研究主任のキンバリー・ホッキングス(Kimberley J. Hockings)氏も「この行動は『宴会』という行動様式の進化の初期段階を示しているのかもしれない」と指摘しました。
つまり、人類に特有の「お酒は一緒に楽しむ」という習慣の起源は、人間が生まれるずっと前の祖先にまで遡れる可能性があるのです。

では、なぜアルコールは決まって仲間と一緒に摂取しようとするのでしょうか?
これについて研究者は「社会的な絆を強化するためだろう」と推測しています。
アルコールにはドーパミンやエンドルフィンの分泌を促す作用があり、人間では「幸福感」「リラックス」「親密感の増加」といった効果をもたらします。
チンパンジーにも同様の神経系が存在するため、アルコールによる一時的な安心感や快感が、仲間同士の信頼感を高める役割を果たしている可能性があります。
これは人間の「飲みニケーション」にも通じる行動です。
ただ今回の調査報告はまだ、チンパンジーが発酵した果実を一緒に食べる様子が初めて撮影されただけであり、これが宴会文化の始まりであるとか、社会的な絆の強化行動であるとは断言できません。
それでもこのチンパンジーの行動は、宴会文化の原型を示すものとして、研究者たちは大いに注目しています。