Credit:canva
social-problem

「日本の投票率」が問題になるけど、アメリカ見てると意味ない気がする (3/3)

2025.04.26 12:00:14 Saturday

前ページなぜ、アメリカではこうした制度が成立してしまったのか?

<

1

2

3

>

日本ではなぜ、まだこうした制度が根付いていないのか?

Credit:canva

今のところ、日本には「投票率が上がれば、民意が比較的まっすぐ政治に届く」という希望があります。制度上も、構造上も、それを妨げる障壁はアメリカほど強くはありません。

ただそれでも、選挙活動における資金の力は無視できません。

選挙にはポスターやチラシ、街宣車の手配、インターネット広告、演説会場の設営、人員の動員など、知名度と訴求力を高めるための“広報戦*が必要不可欠です。資金がある候補は、こうした活動を何倍もの規模で展開できます。

つまり、より多くの人に“名前”と“メッセージ”を届ける力があるかどうかが、当選の土台を左右するというわけです。

組織や派閥から支援を受ける候補は、こうした選挙戦をより効率的に、かつ広範に展開できます。また資金支援に加え、後援会の人員動員、地元の業界団体とのパイプなど、選挙の“勝ちパターン”を持っているのです。

一方で、政党に属さない新人候補や、派閥に依存しない若手候補は、資金力・組織力の面で不利な状況に置かれやすくなります。

このような環境下で投票率が低いとどうなるか。

「動員力のある組織」が投票結果を大きく左右する割合が高まります。20%の組織票でも、投票率が40%なら得票の半分に迫ります。つまり、“一部の組織の声”が、“全体の民意”を凌駕してしまう構図が生まれるのです。

その結果、政治家たちは国民全体よりも、特定の組織、団体、派閥の利益を優先するようになり、社会全体の公正さと透明性はどんどん損なわれてしまうのです。

こうした環境で育つ若い政治家たちは、「国民全体のために働く」という本来の使命感を失い、「派閥に忠誠を誓う」「組織に恩返しをする」ことが政治の目的になってしまいます。

以前、麻生太郎元首相が「(政治に)無関心で、投票に行かずに家で寝ていてくれればいい」という発言をして物議を呼んだことがあります。

これについては麻生氏が、自身の属する勢力にとって有利な状況を望む本音が、つい口をついて出たのか、彼特有の皮肉だったのかわかりませんが、この言葉は投票に行かないことが結果的にどういう意味を持つかを、逆説的に警告しています。

組織票というのは基本的に“絶対数”が変わらないところに強みがありますが、逆に言えば投票率が上がれば、“全体に占める割合”が下がり、その力は薄まります。

たとえば20%の組織票があっても、投票率が70%になれば、その比率は3分の1以下に落ちます。その結果、組織以外の声、つまり無党派層・一般市民の投票が政策決定への影響力を取り戻すのです。

なので投票率の低下は、組織票を持つ勢力にとって追い風になります。

これはある意味民主主義の落とし穴にもなっていて、例えば、パーティー券を利用した派閥の裏金問題など、政治家の金銭スキャンダルが問題になったとき、問題の政党が失脚するどころか逆に追い風を受けてしまう場合があるのです。

多くの国民が政治に失望したり、不信感を抱くような不祥事が頻繁に報道されるようになってくると、多くの国民は政治への信頼を失っていきます。

それが「政治家なんてみんな汚れている」「どうせ誰がやっても同じだ」という無力感として広がり、投票率が低下します。

すると、組織票を動員できる団体や企業の影響力が相対的に強まるため、それらの支援を受ける派閥が当選しやすくなってしまうのです。

もし不正問題などがあってニュースで糾弾されている政治勢力が、縮小するよりむしろ勢いを増しているように見えた場合、その裏にはこうした力学が潜んでいるのかもしれません。

【編集注 2025.04.28 09:00】
誤字を修正して再送しております。

<

1

2

3

>

「日本の投票率」が問題になるけど、アメリカ見てると意味ない気がする (3/3)のコメント

Ryu

アメリカの制度問題や、日本の投票率の低さが引き起こす未来への問題提起は仰る通りだと思います。

一方でもう少し深掘りし、アメリカの「66.8 %」が本当に高い数値なのか?日本の投票率が「低い」とされる原因はなにか?に問題があると思います。

総務省の統計によると、1946年〜1993年までの衆院選で投票率が「65 %」を下回った選挙は1度もありません。

ところが1996年以降は低迷を続け、65%を超えた回は2回しかありません。

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/ritu/index.html

何があったのでしょうか。
色々な要因が考えられますが、私が考えるに「比例代表制」の導入(1996年)が大きな要因であると考えます。

比例代表制の説明は割愛しますが、ここで問題となるのは「比例代表」いわゆる「ゾンビ議員」の蔓延です。

現在の日本の選挙制度では「当選してほしく無い」候補でも、政党の匙加減ひとつで当選させる事が実質できてしまい、民意を反映しづらい制度となっています。

私はここに、日本の投票率の低さの原因があると考えています。

ゲスト

どちらかというとアメリカの民主主義こそが本来の民主主義なのだと思いますけどね。

ゲスト

ゲリマインダーって何度も書いてるけど発音的にも日本語としてもゲリマンダーが正しい。誤字は一回だけとか正しくも言い直してるならスルーするけど、誤字でしか書いてないから突っ込む。そういう所からもライターが普段社会学政治学にあんまり関心無いのが分かる。これはコスコとコストコみたいにどっちも正しいパターンでもない(発音は英語圏でなくてもほとんどコスコだけど日本公式名称はコストコ)。
「みんな投票に行け!」と言う奴は「みんな俺が入れる候補者に入れろ!」って言ってるだけ。「白紙でも投票に行け!」って言う奴はその意義を説明しきれない、た例えばその移動時間を他のもっと生産性のある事に充てた方が有意義。「オーストラリアでは投票しないと罰せられる」と言う奴は投票しない自由がある国の方が多い事を理解出来ていない。
政治哲学者によっては6歳から投票権を与えろという人もいるし、高齢化社会では若者の票を重くしろと言う人もいる。しかしソクラテスの頃から「誰でも彼でも投票すると政治が愚民化する」と言われている。船や飛行機の操縦は乗客の中でも限られた人しか能力的に出来ないのに、政治はなぜ操縦桿を握った事も無い人にも平等な権利を与えてしまうのかと。
万人には政治に関わる能力を身に着ける権利と機会を与えるべきであって、無条件に政治に口出しして良い訳では無い。選挙の度に知名度だけのタレント議員に票が集まるのを見せつけられると日本にいるのが汚らわしくなる。俺は政治家も信用しないけどそれ以上にガーシーとかを当選させるような国民の方をもっと信用していない、ゲリマンダーどころの話をするレベルに達していない。遊びたいなら税金を介さない所で個人的に遊んで欲しい。
そして問題は政治に関わる能力の基準は人の数だけあるから成立し得ないし、もし成立させてしまったらそれは強権での言論統制など悪用されるリスクが大きい事だ。よく虐待事件がある度に結婚出産を免許制にしろとか言う奴もいるけど、そういう無責任な事を言う奴はその具体的機銃までは決して言わない。もし強引に言わせたらそいつ自身がセーフになるところにハードルを設けようとするだろう。

大統領を直接選挙制にしても問題が無い訳では無い、例えば去年の台湾総統選と国会議員選挙ではどの党も過半数取らなくて、第二党と第三党が結託して第一党を数で上回る権力を手に入れようとして、国会のルールを都合良く変えた事で大規模デモが起きた。日本で言えば司法と立法と行政がそれぞれ別々の党が仕切ってるとすると、各党は自身の権力を強めるためにそれぞれの縄張りの権力を強めようとする。司法の与党は司法権を強めて何でもかんでも自分たちで裁けるようにしたがり、それを行政の与党が行政権を強めて対抗したり。三者の権力が3対3対3から5対5対5に上がっても均衡状態である事には変わりないけど国民との権利差が拡大する事で政治が強権独裁化する。アメリカでは民主党も共和党も自分たちの都合をばかり考えていて下位層や貧困層を救う事なんてろくに考えていないのに、国民は両党のプロパガンダに踊らされて利用されている。例えばトランプは一期目に労働者の生活水準を全く上げていないのにまた選ばれた。民主党はオバマケアなどそれなりの左派的政策もしたけど経済グローバルでそれ以上に労働者から仕事を奪った。直接選挙だろうが間接選挙人制度だろうが万能ではない。
政治学を義務教育にした所で国家に都合良い洗脳授業しかしないし、私立校を増やして自由に勉強させたところでどの生徒とその親もやはり自分たちの目先の利益を考える。民主主義は一説には古代ギリシャどころかインドでもっと先に発明されたと言う説もあるけどいずれにしろ何千年経っても万人が納得出来る参政制度

ゲスト

結局は民主主義は教育なんだよね
なのにその教育が不当な手段での競争によって歪められて知性や教養を得る手段から「格付けや階級を作る手段」にすり替えられてしまった
それが日本では教養不要で「忖度力」とテストを解く「テクニック」だけに偏重して、政治を含め物事を解決ではなく「勝利でねじ伏せる」って発想でしか理解しなくなってる
アメリカはと言えば格差の固定化の手段としての金持ち地区の教育と貧乏人地区の教育格差が広がり、民主党支持者は金持ち優遇と優生思想の為に政治介入し、その抵抗勢力として教育の足りないトランプ支持者が発生したのだし
どちらも教育を本懐である人を育てる手段ではなく階級や格付け形成の手段に悪用したが為に勝ち組は選民思想に染まり弱者の生活を蔑ろにし、負け組は教育から正しい知性や教養を得られないまま不満だけを膨らまし無為に政治や社会を敵視することになる
だからこそ解決の道は教育の健全化しかないと思う、さもなくば都合の良い悪を見つけて討ち取ったとしても事態の悪化が進むだけじゃないかな

ゲスト

記事にあるように、政治家は投票率が上がったら組織票の効果が薄まります。
組織票をバックにしている政党は組織に関係ない人が投票しない方向でプロモーションするでしょう。電通や博報堂も選挙に関わっていますし。
わかりにくい国会中継と報道、参入障壁が高く、高度な選挙戦術が必要な選挙運動を維持することで、組織以外の有権者は選挙に行きません。
一方、国民民主やれいわのように、一般の有権者から票を掘り起こす政党も出てきています。
日本の政治家はお互いの資金源と組織の弱体化を狙いながら駆け引きしている状況ですが、そんなことより、日本の未来を考えた議論をし、正しく政策立案や立法の出来る政治家に投票する国になってほしいものです。
私たちは政治家に投票したいのであって、組織の人、選挙屋、タレント、ポピュリストなどに投票したいのではないのです。
そのためには、日本国民がもう少し政治家を見る目を養わないといけないのでしょうが。

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

社会問題・社会哲学のニュースsocial-problem news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!