■ヒト科の一種ホモ・エレクトスの絶滅原因の一つが「怠惰」にあることが判明
■彼らは石の道具を作る際に質のいい石を求めて出歩かず、生活地帯周辺の質の悪い石を用いた
■その保守的な態度により、環境の変化に適応することができず絶滅した
オーストラリア国立大学による最新の調査により、更新世に生きたヒト科の一種「ホモ・エレクトス」が絶滅した要因の一つとして、彼らが「なまけ者」であったことが挙げられることが分かりました。
Acheulean technology and landscape use at Dawadmi, central Arabia
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0200497
かつてホモ・エレクトスが分布していたアラビア半島の発掘調査で、彼らが「道具作り」や「狩猟採集」に対して非常に怠惰な戦略をとっていたことが明らかになりました。
彼らは石で道具を作る際に、キャンプ周辺に転がる適当な石を材料にしていました。その石のクオリティは、後の時代の石の道具に使用されていたものと比べて相当に低いもの。
彼らは小さな丘を登った少し離れた場所に行けば、質のいい石が得られることを知っていたにも関わらず、「怠惰」のためその場を動こうとしなかったというのです。
そのクオリティの道具でも十分な狩猟採集ができていたために、「どうしてわざわざ面倒なことをする必要があるのか?」と思っていたことが考えられます。
そんな「なまけ者」な彼らとは対照的だったのが、後に石の道具を作り始めたホモ・サピエンスやネアンデルタール人です。彼らは質のいい石を求めて遠くの山に登り、時間をかけてその石を自らのすみかへと持ち帰ったのでした。
ホモ・エレクトスは怠惰であっただけでなく、非常に「保守的」でもありました。周辺の堆積物のサンプルから、彼らが生息していた地域の環境が変化していたことが分かっています。しかしながら、彼らは環境の変化に合わせることなく、同じ行動をとり続けていたのです。
そこに「進化」は全くありませんでした。そして彼らが生活できないほどに環境が変わってしまった後、それに適応できなかった彼らは絶滅してしまったと考えられます。
情報革命により、目まぐるしく環境が変化する現代。かつて「現状維持は衰退である」と語ったウォルト・ディズニーの言葉が、私たちに重くのしかかります。