飲み忘れなし!「時間差で薬を放出する新カプセル」の開発

薬を毎日きちんと飲むことは、簡単そうで、実はとても難しいことです。
特に複数の病気を抱える患者では、1日で10錠以上の薬を時間をずらして飲むことも珍しくありません。
加えて、薬の効果を最大限に引き出すためには、空腹時や食後などの条件を守る必要もあります。
忙しさ、うっかり、体調の変化、あるいは認知機能の低下など、服薬にはさまざまな“ミス”のリスクがつきものです。
そのため近年では、薬の数を減らしたり、飲みやすい剤形にする工夫が進んできました。
たとえば「配合薬(2種類以上の成分を1錠にしたもの)」や「徐放剤(ゆっくりと薬が溶けるように設計された薬)」などがその例です。
しかし新しく開発されたカプセルは、そうした工夫を一歩どころか数歩先に進めた設計になっています。

カプセルの中には、それぞれ異なる薬剤を封入した複数の小部屋があり、それぞれが腸で溶けるバリアで仕切られています。
このバリアは「pH-responsive polymer」という特殊なポリマーで作られており、胃酸で溶解せず、アルカリ性の環境で溶解する性質を持ちます。
そのためこのポリマーの濃度を変えることで、各バリアがどの時間に溶けて薬を放出するかを数十分単位で調整可能となっています。
つまり、たった1つのカプセルに、たとえば「朝8時に1種類目」「正午に2種類目」「夕方6時に3種類目」のように、時間差で異なる薬を放出する“タイマー機能”が組み込むことができるわけです。
さらに注目すべきは、このカプセルがただ自然に溶けるだけではないという点です。
研究チームは、カプセルの外層にマグネシウムの微粒子を含めました。
このマグネシウム粒子が放出されると、胃酸と反応して泡が発生。薬剤を周囲に効率よく拡散させることができます。
これは、鎮痛剤、心血管薬、救急治療薬など、迅速な吸収が求められる薬剤に特に有効です。
また、マグネシウムには胃酸を中和する働きがあり、一時的・局所的にアルカリ性環境を作り出せます。
これにより、より精密にバリアを溶解をコントロールし、薬剤を放出させることも可能なのです。
そしてこの新しいカプセルを用いた実験も行われました。