時間も空間も本質ではなくどちらも「量子もつれ」から生じている
時間も空間も本質ではなくどちらも「量子もつれ」から生じている / Credit:Canva
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時間も空間も本質ではなくどちらも「量子もつれ」から生じている

2025.05.07 21:05:10 Wednesday

夜空に輝く星々や、手を伸ばせば触れられる身近な物体――それらが存在する空間は、ごく当たり前に「そこにある」ものだと私たちは考えています。

ところが最先端の物理学では、そんな「空間」そのものが、実は“見えない量子の糸”によって巨大な情報のネットワークとして織り上げられているかもしれない、という驚くべき考え方が浮上しています。

カナダの物理学者マーク・ヴァン・ラムスドンク氏は「量子もつれこそが空間を繋ぎ止める“接着剤”のようなもの」だと述べています。

にわかには信じ難い話ですが、最先端の物理学では「空間そのものが量子もつれなどの量子的現象から生じている」という驚くべきアイデア――「時空エマージェンス」概念が真剣に議論されているのです。

もし空間そのものが量子情報の副産物だとすれば、私たちが「ここ」と感じる場所や「今」と呼ぶ瞬間は、どのようにして立ち現れているのでしょうか?

日常に感じる空間と時間は「箱」と「川」?

日常に感じる空間と時間は「箱」と「川」?
日常に感じる空間と時間は「箱」と「川」? / Credit:Canva

私たちはふだん空間と時間をそれぞれ「箱」と「川」のようにイメージしています。

空間は、あらゆる物体や出来事を収める三次元の大きな箱(入れ物)のようなものです。

一方、時間は過去から未来へと一方向に流れる川のようなもので、その流れに沿って物事が因果的に進んでいきます。

このような直感的な理解を、多くの人が持っているでしょう。

古典物理学の父アイザック・ニュートンも、空間と時間は独立に存在する絶対的な舞台だと考えました。

しかし20世紀初頭、アインシュタインはそれまで別物と思われていた空間と時間が実は密接に結びついた「時空」という概念で記述できることを示しました。

アインシュタインの一般相対性理論によれば、重い物体によってこの時空という“ゴムシート”が歪められることで重力が生まれます。

こうした発見により、空間と時間はそれ自体がダイナミックに振る舞うものだと分かりましたが、それでも「空間が存在すること」自体は疑われてはいませんでした。

私たちの直感では、宇宙に何があろうと空間そのものは単なる器としてあり続け、時間もただただ刻々と過ぎていくものです。

しかし、現代物理学の挑戦はこの直感をさらに揺さぶります。

量子力学と相対性理論という2大理論を融合させて宇宙の根本原理を解明しようとする中で、「空間」や「時間」は当たり前にあるものではなく、もっと基礎的な何かから生まれた二次的な現象(=創発現象)かもしれないという見方が浮上してきたのです。

これはいったいどういうことでしょうか?

次ページなぜ「空間は幻想かもしれない」のか――理論物理が挑む謎

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