日常に感じる空間と時間は「箱」と「川」?

私たちはふだん空間と時間をそれぞれ「箱」と「川」のようにイメージしています。
空間は、あらゆる物体や出来事を収める三次元の大きな箱(入れ物)のようなものです。
一方、時間は過去から未来へと一方向に流れる川のようなもので、その流れに沿って物事が因果的に進んでいきます。
このような直感的な理解を、多くの人が持っているでしょう。
古典物理学の父アイザック・ニュートンも、空間と時間は独立に存在する絶対的な舞台だと考えました。
しかし20世紀初頭、アインシュタインはそれまで別物と思われていた空間と時間が実は密接に結びついた「時空」という概念で記述できることを示しました。
アインシュタインの一般相対性理論によれば、重い物体によってこの時空という“ゴムシート”が歪められることで重力が生まれます。
こうした発見により、空間と時間はそれ自体がダイナミックに振る舞うものだと分かりましたが、それでも「空間が存在すること」自体は疑われてはいませんでした。
私たちの直感では、宇宙に何があろうと空間そのものは単なる器としてあり続け、時間もただただ刻々と過ぎていくものです。
しかし、現代物理学の挑戦はこの直感をさらに揺さぶります。
量子力学と相対性理論という2大理論を融合させて宇宙の根本原理を解明しようとする中で、「空間」や「時間」は当たり前にあるものではなく、もっと基礎的な何かから生まれた二次的な現象(=創発現象)かもしれないという見方が浮上してきたのです。
これはいったいどういうことでしょうか?