“卵は横が強い”衝撃の一報

研究チームは、卵の強度を比較するために2種類の実験を行いました。
一つは「静的圧縮試験」で、卵を固定してゆっくり押しつぶし、ひびが入るまでに要する力(強度)や殻の変形のしやすさ(剛性・靭性)を測定するものです。
もう一つは「動的落下試験」で、実際に卵を一定の高さから落として割れる確率を比較しました。
まず静的圧縮試験では、卵を縦向き(尖端か底が上下)と横向きにそれぞれセットし、少しずつ力をかけて押していきました。
その結果、殻にひびが入り始めるまでに必要な力は縦向き・横向きでほとんど同じであることが分かりました。
実際、およそ45ニュートン(約4.6kg重)の力で、どちらの向きでも殻にヒビが入ったのです。
縦向きだから特別に強いというわけではなく、「卵の強度(割れる直前に耐えられる力)は向きに関係しない」ことが示されました。
しかし、重要なのはその割れ方の違いでした。
横向きの卵は、割れる直前に縦向きよりも大きく変形していたのです。
言い換えれば、同じ力を加えても横向きの方が殻がたわんで衝撃を受け止める余裕がある(=しなやか)ことを意味します。
研究チームは卵の「赤道」にあたる側面部分(中央の膨らんだ帯状の部分)の方が柔軟であるため、この部分から力を加えた方がエネルギーを多く吸収できるのだと考察しています。
つまり同じ45ニュートンという力で割れたものの、それまでに必要な仕事量は横置きのほうが多く必要だったのです。
次に動的落下試験では、専用の装置により複数の卵を常に一定の向きで同時に落下させ、割れるかどうかを比較しました。
高さはごく低い8、9、10ミリメートル(約1センチ弱)から硬い床面に落とす条件で、合計180個(各高さごとに60個)の鶏卵を使っています。
一見すると非常に低い高さですが、卵にとっては割れるかどうかの境界が現れる絶妙な高さです。
試験の結果、縦向きに落とした卵は横向きよりもずっと低い高さで割れ始めることが明らかになりました。
例えば高さ8mmからの落下では、縦向きの卵は半数以上がひび割れてしまいました(尖ったほうを下にしても、丸い底を下にしても結果に差はありませんでした)。
これに対し横向きの卵で8mmの高さから割れたものは1割未満しかありませんでした。
わずかな高さの違いですが、横向きでは割れないのに縦向きでは割れてしまうという統計的に有意な差が確認されたのです。
このように横向きの卵は落下衝撃に対する「実用上の強さ」(割れにくさ)で縦向きよりも優れているといえます。
また研究では卵が割れるまでに吸収したエネルギーを計算したところ、静的圧縮でも動的落下でも、横向きが縦向きよりも約30 %大きいことがわかりました。
ちなみに実験後の卵はスタッフ(の犬)が美味しく頂いたとのこと。