卵は横向きで落ちるとむしろ割れにくくなると判明:MIT最新研究が常識を覆す
卵は横向きで落ちるとむしろ割れにくくなると判明:MIT最新研究が常識を覆す / Credit:Antony Sutanto et al . Communications Physics (2025)
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卵は横向きで落ちるとむしろ割れにくくなると判明:MIT最新研究が常識を覆す (3/3)

2025.05.09 17:00:07 Friday

前ページ“卵は横が強い”衝撃の一報

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しなやかさこそ真の強さ

しなやかさこそ真の強さ
しなやかさこそ真の強さ / Credit:Antony Sutanto et al . Communications Physics (2025)

では、なぜ横向きの卵は縦向きより割れにくいのでしょうか?

ポイントは「力の受け止め方」の違いにあります。

縦向きの卵は、一方向から力が加わると殻全体ががっちり踏ん張って硬く抵抗しますが、その反面急な衝撃には脆い性質があります。

硬くて変形しない分、ひとたび限界を超える力がかかるとパキッと割れてしまうのです。

一方、横向きの卵は縦向きよりもしなやかで、力を受けると殻が少したわみます。

その「たわみ」こそが衝撃を吸収するクッションの役割を果たし、殻全体に力を分散させてくれます。

これはちょうど高い所から飛び降りるとき、膝を伸ばしたまま着地するより膝を曲げて着地した方が衝撃を和らげられるのと似ています。

研究チームのジョセフ・ボナヴィアさん(機械工学専攻の大学院生)は次のように説明しています。

「ある意味では、膝を曲げた脚は『より弱い』ように見えますが、衝撃を吸収するという点では実際にはより強いのです。」

「卵も同じことで、強さとは単に大きな力に耐えることだけでなく、その力をどう分散・吸収するかにかかっているのです。」

つまり縦向きの卵は初期的な剛性(stiffness)は高いものの靭性(toughness)が低いのに対し、横向きの卵は剛性は低い代わりに靭性(衝撃に耐える粘り強さ)が高いといえます。

今回の結果は、これまで混同されがちだった「硬さ」と「強さ」と「靭(しな)やかさ」の違いをはっきり示すものでもありました。

身近な経験からすると、「卵は横から割れる方が簡単」と思うかもしれません。

実際、料理で卵を割るとき私たちは横向きに軽くぶつけて殻にひびを入れ、中身を取り出します。

しかしこれは殻の一点に意図的に力を集中させて割る行為であり、卵全体で衝撃を受け止める今回の落下実験とは意味が異なります。

調理用に卵を割る場合には横からの方が効率的ですが、落下衝撃に対しては横向きの方が全体で力を吸収でき有利なのです。

研究者らも「料理の際に卵を横から割るのは衝撃に耐えるのとは違う」と指摘しており、日常感覚と科学実験の結果の違いを丁寧に説明しています。

また、この知見は日常生活でもちょっとした応用が考えられます。

例えばゆで卵を作る際、沸騰したお湯に卵を入れるときには卵を横向きにしてそっと沈めると、殻にヒビが入って中の白身が飛び出してしまうリスクを減らせるかもしれません。

卵を縦向きに落とすより横向きの方が衝撃に強いと分かったことで、こうした台所での「ゆで卵あるある」にも科学的な説明がつく可能性があるのです。

今回のMITによる研究は、誰もが疑わずに信じていた定説をデータで検証し、覆してみせた点で大きな意義があります。

「卵は縦向きが強い」という広く受け入れられてきた“直感的な常識”は、厳密に試してみる価値があったと言えるでしょう。

この成果は卵の殻という身近な対象を通して、私たちに科学的探究心の大切さを教えてくれます。

研究チームは次のように述べています。

「この論文は、直感ではなく経験とデータに頼ることの価値を思い出させてくれるものです。」

「身近で当然と思われていることでも疑問をもち、実験してみれば新たな発見があるかもしれない。」

「私たちの研究が学生や若い人たちに好奇心を持ち続け、馴染みのある前提さえも問い直してみるよう促すきっかけになれば嬉しいです。」

私たちの周りの物理世界には、まだまだ常識に隠れた不思議が眠っているのかもしれません。

卵の割れ方一つとっても、そこには「なぜだろう?」と問い、その答えを探求する面白さが詰まっているのです。

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卵は横向きで落ちるとむしろ割れにくくなると判明:MIT最新研究が常識を覆す (3/3)のコメント

ゲスト

建築に使うなら端が固くて中央が柔らかい構造にすることで破壊に対する抗力が上がるということですね。
植物の茎の構造もそうだった気がしますよ。
小さなスケールでそうなっている構造体をクロスさせるように組み合わせて大きな構造体とか作ると多方向からの力に強くもできないですかね。

ゲスト

横向きのほうがぶつかる点での法線方向が重心の方向からずれやすいから回転して衝撃を吸収するまでの時間が長くなってる効果もありそう

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